企業と生活者懇談会
2019年11月26日 静岡
出席企業:トヨタ自動車
見学施設:トヨタ交通安全センター モビリタ

「トヨタの交通安全活動の取り組みについて」

11月26日、トヨタ自動車が運営するトヨタ交通安全センター モビリタ(静岡県駿東郡小山町)(以下モビリタ)にて「企業と生活者懇談会」を開催、生活者13名が参加しました。 はじめにトヨタ自動車の交通安全啓発活動の取り組みに関する説明を受けた後、ドライバー向けの安全運転技術講習等を実施。講習では、座学で学んだ安全運転のポイントについて講習車に乗りながら理解を深めました。その後の懇談では、幅広いテーマについて活発な質疑応答が交わされました。 トヨタ自動車からは、社会貢献推進部プログラム推進室交通安全推進グループの立川穣一グループ長、および同グループ神谷明子氏が出席しました。

トヨタ自動車について

■「交通事故死傷者ゼロ」に向けた取り組み ■
 トヨタ自動車は、創業者である豊田喜一郎の父、豊田佐吉が設立した豊田自動織機製作所(現 豊田自動織機)内に設けられた自動車部を起源に、1937年に創業されました。 
 自動車という乗り物の提供だけでなく、交通事故のない社会を実現するために、クルマの安全技術開発や実用化に取り組むとともに、クルマを運転する「人」のための交通安全啓発活動にも力を入れています。
 同社は、「交通事故死傷者ゼロ社会」の実現のためには、「クルマ」「交通環境」「人」が三位一体となるべきだと考えています。まず「クルマ」は、ドライバーが運転を誤ってしまったときに被害を軽減させる装備や、自動運転といったような安全技術の開発・実用化。次に「交通環境」は、道路上の信号や交差点、自動車運転に関わる法整備などの実現。最後に「人」は、運転者・歩行者の両者を対象とした交通安全啓発活動を指します。 
 日本における近年の交通事故の状況としては、行政指導や自動車メーカー各社における安全技術開発などが功を奏し、発生件数と死傷者数は共に年々減少しています。また、状態別の死者数は最多が歩行者、次に自動車運転者が多く、さらに死傷した歩行者を年齢別に区分すると、7歳児が突出して多いことが分かっています。これは、保護者の送り迎えに慣れた子どもが幼稚園・保育所を卒業し、小学校登下校時に、交通ルールに不慣れなために交通事故に遭うケースが多いです。 
 従って、同社の交通安全啓発活動は、交通事故死傷者の大半を占める歩行者および自動車運転者を主な対象とし、特に、運転中の人の心理や行動に起因する事故を防ぐための意識づけと運転講習に注力しています。 
 一方、同社が長年にわたって行っている活動が、幼児向け交通安全教育教材(絵本・紙芝居)の制作と教育機関への無償配布です。過去50年間で、絵本1億4675万部と紙芝居171万部を提供しました。また、トヨタ会館(愛知県豊田市)とモビリタ(静岡県駿東郡)で、幼児向け交通安全教室「トヨタ セーフティスクール」を開催。これは、幼児の交通事故に多い急な飛び出しの危険性や正しい道路の渡り方などの交通ルールを、劇やクイズを通じて楽しく学ぶものです。これまでに、累計27万5000人の年長園児、4100園が参加しています。 
 また、高齢者向けの活動としては、業界団体である日本自動車工業会などと協力して「いきいき運転講座」を実施。体幹の運動神経を目覚めさせるための「神経シゲキ体操」を推奨。自社ウェブサイトへの動画掲載やイベントを通じ、安全に運転していただくための啓発を行っています。さらに、東京都江東区青海にある同社の展示施設「メガウェブ」にて、65歳以上を対象とした高齢者ドライバー向け運転講習を定期的に開催しています。 
 さらに、オリジナルキャラクター「マチホタル」をモチーフとした反射材を制作・配布し、夜間歩行者の安全向上を呼び掛けています。 
 この他、タイやベトナム、ミャンマーなど、同社の事業拠点がある海外の国々でも、地域社会向けに様々な交通安全啓発活動を行っています。 

■モビリタについて■
 モビリタは、ドライバーだけでなく交通社会を構成する全ての方々の安全意識向上に寄与する目的で、2005年4月、富士スピードウェイ内に開設されました。 
 モビリタという名前は、「動きやすさ」「機敏性」を意味するラテン語“mobilitas”にちなみ、健康で豊かなモビリティ社会に貢献したいという願いを込めたものです。 
 モビリタは、3つの教室やラウンジのあるコミュニケーションセンターに加え、国内最大級の10万平方メートルのフラットコース、35度バンク(傾斜路)や低ミュー路(雨や雪などで滑りやすい路面を人工的に再現した道路)を持つ専用コースなど、教室での座学講習だけでなく多様な安全運転実技講習のための設備を備えています。
 モビリタでは、同社が1987年から実施しているドライバー向け安全運転講習会「トヨタ ドライバーコミュニケーション」から幼児向け交通安全教室、交通安全に携わる人材の育成指導まで、幅広いニーズに応える多様なプログラムを提供してきました。 
 モビリタのプログラムに参加する方は、個人の方から業務で自動車を運転される企業の方々まで様々で、2018年は約3500人が利用しています。 
 トヨタ自動車は、モビリタを交通安全啓発活動の拠点とし、様々なプログラムを提供するとともに、「交通事故死傷者ゼロ」の実現を目指しています。

見学の様子

■座学講習■
 参加者はまず、専任インストラクターから運転時におけるコミュニケーションや他者への気遣いの大切さを学びました。ヘッドライト点灯やウィンカー、早めのブレーキペダルなど、これらは全て運転コミュニケーションのための重要なツールです。
 車の運転は、認知→判断→操作という一連の動作の繰り返しです。例えば運転者は、まず前方の信号機の赤を認知、次に止まるという判断、それからようやくブレーキを踏みます。交通事故の大半が、この最初の認知の不足や遅れに起因するものです。
 また、人身事故の4割が追突、前方停止中の車の認知が不十分であり正確な判断ができなかったことによるものです。従って、運転者の認知力向上が安全運転の重要なポイントとなります。
 次に参加者は、講習車に乗り込み、正しい運転姿勢や正確なシートベルトの締め方、ヘッドレストの適切な高さ、運転席からは見えない死角などについて学びました。特に死角については、体験した参加者から「知らなかった」との驚きの声が多数上がりました。

■安全運転実技講習 ■
 そしていよいよ、実際に車を運転する安全運転実技講習です。富士山の麓ということもあり霧が出始めた中、参加者は2人1組となって車に乗り込みました。
 まず、時速60キロメートルそして80キロメートルという高速運転からのフルブレーキングの体験です。素早いブレーキ操作と安全装置ABS(アンチロック ブレーキ システム)の正しい使い方を習得するとともに、急ブレーキを踏んだ後の人間の精神状態はどのようなものなのかを学ぶ貴重な体験となりました。
 次に、低ミュー路ブレーキングの実践です。雨や雪の状態を想定した滑りやすい路面でブレーキを踏んだときのスリップやABSの限界といった「キケン」を、安全に体験しました。
 さらに、低ミュー路では、突然現れる障害物に見立てた噴水や、パイロンに衝突しないよう、落ち着いて安全に回避し走行するトレーニングを行いました。
 最後に、飲酒運転の疑似体験です。参加者は、飲酒状態を疑似的につくり出すゴーグルを着用して、運転に挑戦。視界が狭まり景色もゆがんで見える様子を目の当たりにし、素早い認知や正常な判断を難しくする飲酒運転の恐怖を、身をもって体験しました。
 全てのトレーニングを無事に終えて車から降りた参加者からは、「普段の生活では体験できないことばかりだった」「緊張の連続で、精神状態がいかに運転に影響を及ぼすものかよく分かった」との声が聞かれました。

トヨタ自動車への質問と回答

社会広聴会員:
最近、高齢者ドライバーの事故のニュースが取り上げられていますが、トヨタの安全運転推進のための取り組みについて、お聞かせください。 
トヨタ自動車:
まず、車両メーカーとして、アクセル/ブレーキの踏み間違い時サポートブレーキ(インテリジェントクリアランスソナー)の標準搭載化や、居眠り運転時の警告システムや車線検知技術の搭載など、高齢者を含む全てのドライバーの安全運転を支援するための車両技術開発に注力しています。また、高齢者向け安全運転講習を多くの方々に提供しています。
 「交通事故死傷者ゼロ社会」の実現に向けて、国や自治体、関係企業等と力を合わせて今後も努力を重ねていきます。
 

社会広聴会員:
自動運転技術の開発状況は、どのようになっていますか。
トヨタ自動車:
自動車運転において、クルマと運転者(人)はパートナーの関係にあります。交通事故を減らすためには、人と自動車とがお互いを見守り助け合うことが大切です。自動運転技術は、「交通事故死傷者ゼロ社会」達成の一助となる大きな可能性を秘めていますが、その技術自体は自動車メーカーのみで実現できるものではありません。当社は2016年、米国西海岸に、自動運転の重要な要素となる人工知能技術に関する研究・商品企画のための会社を設立しました。マサチューセッツ工科大学やスタンフォード大学などと、自動運転に関わる共同研究を進めています。
 また、2020年東京オリンピック・パラリンピックの選手村内の移動手段として、ほぼ完全自動運転となる大型電気自動車「eパレット」の運用を目指しています。 
  

社会広聴会員:
トヨタのものづくりの精神について、教えてください。
トヨタ自動車:
ものづくりを含むトヨタの精神を表すものとして、創業時から続く「豊田綱領」があります。これは、「産業報国」「質実剛健」「温情友愛」「報恩感謝」など、創業者の父である豊田佐吉の考えを成文化したもので、当社の経営理念でもありグループ全従業員が守るべき行動指針でもあります。豊田綱領は、日常業務の中だけでなく、入社式や株主総会、記者会見など様々な社内外イベントの場でも繰り返し説かれており、グループ全従業員に完全に定着しています。
 また、世界でも広く知られるようになった、トヨタの生産改善方式「Kaizen(カイゼン)」という言葉があります。この「Kaizen」に示されるような、無駄を徹底して排除するとともに、昨日より今日、今日より明日といった日々の地道な積み重ねが大きな効果を生み出すという考え方も、トヨタのものづくり精神を象徴するものといえます。

参加者の感想から

●自分ではできない貴重な体験ができました。日本を代表する、また世界中の自動車メーカーのトップを走るトヨタの社会貢献事業の詳細を見て、企業努力が社会貢献にもつながり、それが会社のイメージと発展につながることを確認しました。

●突発的危険の回避、ブレーキとハンドルの使い方等、貴重な体験ができました。富士山麓の自然と濃い霧の中、トヨタ自動車の取り組みやご苦労など、お話を聞けて楽しかったです。

●丁寧なご説明により、安全に対するトヨタグループの考え方がよく分かりました。

●立派な施設とスタッフの皆さんのレベルやホスピタリティーに感動しました。今後、モビリタのさらなる活用を考えておられるとのことなので、安全教育と未来の自動車のショーケースになることを楽しみにしています。 

●急ブレーキ体験に惹かれて参加しました。実体験し、ハンドルを握っている時よりも、助手席の方が圧と恐怖を感じました。安全運転は、運転技術よりも運転手の心持ちが大切だということ、そして日頃から事故に関する知識を学ぶことの重要性を感じました。また、従業員の改善提案制度についても、素晴らしい企業文化だと感動しました。全従業員の思いの結集が、世界のトヨタを維持しているということ、当たり前のようですが、案外難しいと思います。

●トヨタが国内外で様々な社会貢献活動を行っていることがよく分かりました。また、安全なクルマ社会を実現するためには、人の意識や運転スキル、技術の進歩、交通環境の整備という3つの分野がそれぞれ重要だということが、インストラクターの方のお話を聞き、実際に体験してみて実感できました。トヨタが車に関する技術の向上を目指すと同時に、ドライバーの教育にも力を注いでいることもよく分かりました。

トヨタ自動車ご担当者より

 13名の生活者の皆さまには、霧が立ち込める中、モビリタにお越しくださり、誠にありがとうございました。短い時間でしたが、普段はなかなか体験することのない、車の挙動をご体感いただく機会とすることができました。モビリタでは、企業向け・個人向けの講習メニューをご用意しております。ドライバーの皆さまが「安全運転は挨拶から」という気持ちとともに、今まで以上に安全に運転していただけるよう、スタッフ一同、今後とも努力してまいります。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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