企業と生活者懇談会
2023年6月12日 東京
出席企業:ANAホールディングス
見学施設:ANA Blue Base

「ANAの歴史や舞台裏を、見て、知って、触れてみよう!」

6月12日、ANA Blue Base(東京都大田区)で「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員14名が参加しました。まず、ANAホールディングスから、会社概要と2021年12月に一般公開された同施設の概要について説明を受けた後、日本最大級の訓練施設を見学しました。また、実際の訓練の様子や実機同様のコックピットなども見学し、最後に質疑懇談を行いました。
ANAホールディングスからは、広報・コーポレートブランド推進部担当部長西祐一郎氏、田口修央氏、同部見学事業推進チームマネジャー井上美保子氏、ツアーナビゲーター加藤雄己氏、ナビゲーター神尾苑果氏が出席しました。

ANAホールディングスからの説明

■ANAの概要
 ANAグループは、航空事業を中心としたエアライングループとして、国内外の航空ネットワークや顧客基盤を活かしながら様々な事業を展開しています。旅前から旅後までお客さまに楽しんでいただき、空港に帰着した時に、「ANAにして良かった」と感じていただけるよう、グループ全体で支えあいながら常に安全と最新のサービスを提供することを目指しています。
 ANAは、1952年、28人の社員と2機のヘリコプターで事業を開始し、現在、グループ全体で約4万500人の社員が在籍しており、創業以来、安全を第一に航空輸送サービスを提供してきました。1999年には、世界初、世界最大の航空連合「スターアライアンス」に加盟。当時、同社は国際線事業の規模が現在よりも小さく、十分なネットワークを自力で構築することが困難な状況だったため、スターアライアンスへの加盟はネットワーク拡充に向けた有効な手段でした。加盟後は、欧米路線のネットワーク構築だけでなく、スムーズな乗り継ぎなどお客さまの利便性向上にもつながりました。2011年に、ボーイング787型機を就航し、国際線事業は飛躍的に成長しました。また、同グループは安全の堅持を前提に定時性・品質の向上に努めており、航空データ分析を提供する英国の会社CIRIUMで、2022年の国内線・国際線を合わせた運航実績において定時到着率で2年連続世界1位を獲得しました。他には、英国の航空会社の格付け機関SKYTRAX社より最高評価である「5スター」を10年連続受賞しました。
 昨年、創業70周年を迎えた同社は、これからも安全を第一に、高品質なサービスの提供にこだわり、お客さまに寄り添うエアラインを目指しています。

 

■ANA Blue Base Tourの特徴
 世界最新鋭の訓練設備を有する日本最大級の訓練施設「ANA Blue Base」では、航空機に関わる6つの職種(グランドスタッフ、客室乗務員、貨物スタッフ、グランドハンドリングスタッフ、整備士、運航乗務員)の仕事について学ぶことができます。ANA Blue Base Tourでは、「安全・あんしん」な空の旅づくりの舞台裏を見て、知って、触れて、次は飛行機へ!をコンセプトに、現役社員が専任のナビゲーターとして同行し、ツアーを案内。同社の歴史をはじめ、安全・安心への取り組みなど実際に働く社員の解説を聞きながら、訓練の様子を見ることができます。
 ツアーは、出発ロビー、搭乗ゲートなどを模したエントランスからはじまり、シアターで施設概要の説明を受けた後、6職種の訓練エリアを3階の見学専用エリアから見下ろす形で見学します。各エリアでは、工夫が凝らされた展示パネルや説明用ムービーも見ることができ、それぞれの職種の仕事内容や訓練内容、働く社員の想いについて深く学ぶことができます。最後に、実機同様のコックピットや空港のカウンターなどのフォトスポットで記念撮影を行うことができます。
 このツアーを通して、同社が安全運航のために努力し、グループ行動指針である「あんしん、あったか、あかるく元気!」をモットーに世界へ、未来へ、挑戦し続ける姿をお客さまに体感いただくことを目指しています。

見学の様子

■6職種の訓練施設エリア■
◆「グランドスタッフ」エリア
 グランドスタッフは、空港で最初にお客さまをお迎えし、出発ロビーでのお問い合わせや、自動チェックイン機への案内、機内までのスムーズな案内など、お客さまに気持ちよく空の旅をスタートしていただくことが主な仕事です。このエリアでは、空港と同じチェックインカウンターなど、実際の設備を再現した訓練施設「SPACIA」で、お客さまからの多様な要望に応えるために、搭乗手続きなどの通常業務をはじめ、言葉遣いなどの接遇スキルの訓練を行います。また、年に1回、悪天候による対応やシステムトラブルなどリスクに備えた訓練を行っています。
 参加者は、客室乗務員との制服の違いや、取得者だけが付けることを許されるインストラクターバッジや手話バッジ、言語バッジなどバッジの種類の説明を聞き、興味を示していました。

 

◆「客室乗務員」エリア
 客室乗務員は、全てのお客さまの安全で快適な空の旅のために、機内でお客さま一人ひとりのニーズに合った案内やお手伝いをすることが主な仕事です。訓練時から常に安全を最優先に考え、きめ細やかなサービスができるように、お客さまの様子や希望に寄り添って考えることを心がけています。このエリアでは、脱出用シューターや緊急着水した時に使用するボートを使って、緊急着水・緊急着陸・緊急脱出訓練を行っています。他にも、飛行中の揺れなどを再現できる、日本初導入の訓練機器「CEET(Cabin Emergency Evacuation Trainer)」や大きな揺れ、火災などあらゆる事態を想定し、実機に近い環境で消火訓練を行える施設などで状況に応じた判断能力を培う訓練を行っています。また、非常時の訓練だけではなく、日本のおもてなしを学ぶために茶室なども併設されています。

 

◆「貨物スタッフ・グランドハンドリングスタッフ」エリア
 貨物スタッフは、貨物を専用のコンテナに積み付け、到着した飛行機から貨物を取り出し、お客さまに受け渡すことが主な仕事です。貨物は、工業部品や医薬品、高級車や動物など様々で、船舶と比べて緊急性の高い貨物を素早く輸送できることが大きな強みです。貨物スタッフは、声なきお客さまである貨物を、安全に、丁寧に、満載することの3点を意識して業務に取り組んでいます。
 グランドハンドリングスタッフは、手荷物や貨物を飛行機に搭載・積み下ろし・搬送することに加え、機体の誘導が主な仕事です。自力で後進できない飛行機を運航乗務員と無線で交信しながら、誘導路まで押し出すプッシュバックは重要なミッションで、機内のお客さまに衝撃を伝えないように細心の注意をして行います。このエリアでは、貨物スタッフが様々な形状の貨物を使いながら、フォークリフトで効率よく荷物を積む訓練をしたり、コンテナやパレットの扱い方を学びます。グランドハンドリングスタッフは、特殊車両を使用するため、訓練施設ではなく空港で訓練を行っています。

 

◆「整備士」エリア
 整備士は、常に安全・安心なフライトを提供するために、機体の点検・修理を行います。
 膨大な数の部品が使われ、複雑な仕組みの飛行機を完璧に整備するためには、専門知識や確かな技術が求められます。使用する工具は1万点以上あり、万が一紛失した場合には不具合や事故につながりかねないため、工具にICチップを埋め込むなど管理を徹底しています。このエリアでは、本物のエンジンを使ってネジの締め付けなど整備作業の基礎やトラブルを想定した訓練を行います。参加者は、整備士がマニュアルを全て暗記していることや、キャリアによってヘルメットの色が異なるといった説明を聞き驚いていました。

 

◆「運航乗務員」エリア
 運航乗務員は、客室乗務員や地上スタッフなどと連携し、飛行機を操縦します。このエリアでは、飛行中の急な天候変化など、あらゆる状況を再現できるフルフライトシミュレーターを使って、冷静かつ的確な対応ができるように訓練を行っています。また、運航乗務員は、乗務資格を維持するために年4回の訓練と審査を行い、副操縦士と一緒に行う訓練は4時間にも及びます。参加者は、悪天候時の様子を再現したシミュレーション映像を通して、運航乗務員と地上とのやり取りを体験しました。
 このようにANA Blue Baseでは、実際の訓練の様子が見学できると同時に、見学用通路に、各エリアの職種で実際に使用している制服や道具などを紹介した説明ブースを設けているため、見学しながらさらに各職種について深く理解することができます。最後のフォトスポットエリアでは、空港と同じチェックインカウンターやビジネスクラスシート、航空機用のタイヤなどに実際に触れることができます。

懇談会の概要

社会広聴会員:
ANAグループが目指す経営戦略は何ですか。
ANAホールディングス:
2022年、創業70周年を機に、社員一人ひとりが未来の「ありたい姿」を語りあい、約10年ぶりに経営ビジョンを「ワクワクで満たされる世界を」に刷新しました。このビジョンには、「私たちは、空からはじまる多様なつながりを創り、社員・お客様・社会の可能性を広げていく」という想いが込められています。お客さまの期待に応えるためには、まず社員が生き生きとしなければ何も実現しないと考え、世界を期待や喜びで満たしたいという想いを込めて一新しました。この新・経営ビジョンのもと、お客さまへの感謝とともに、挑戦の歴史を刻み続けていきます。

 

社会広聴会員:
人財育成のためにどのような意識付けを行っていますか。
ANAホールディングス:
2022年、創業70周年を機に、ANAグループの行動指針「ANA’s Way」として、私たちは、「あんしん、あったか、あかるく元気!」に、「安全」「お客様視点」「社会への責任」「チームスピリット」「努力と挑戦」の5つの指針を掲げ、仕事において、チームの会話において、飛行機の運航前の打ち合わせにおいて、様々な場面でどのように意識すべきかを社内で根付くよう、一人ひとりが行動しています。

 

社会広聴会員:
デジタル化への取り組みとしてどのようなことを行っていますか。
ANAホールディングス:
お客さまにストレスのないスムーズな旅をご提供するために、スマートフォンアプリを使ったオンラインチェックインや、国際線では顔認証「Face Express」を導入しています。これまでは空港カウンターで行わなければならなかった手続きが、非対面・非接触型の手続きに移行することで、シームレスかつ安全・安心な旅をお届けしています。ANAグループは、人とデジタル技術を融合しながら、最大の提供価値を生み出すことを目標としています。

 

社会広聴会員:
常に安全第一の航空業界において緊張感を保つためにどのような取り組み・工夫を行っていますか。
ANAホールディングス:
人間はミスをしてしまうので、一人だけではなく、チームでリスクを軽減することに力を入れています。その方法のひとつとして、上位者がメンバーに対して上下関係なく気づいたことを発言するように依頼する「アサーション」を行っています。経験豊富な社員と経験が浅い社員が共に業務に取り組む場面などがあるため、「アサーション」を行うことで困ったことや良かったことなど様々な事例をチーム内で共有しながら、一人ひとりが発言しやすい雰囲気を作ることを意識しています。そのため、日頃から「アサーション」を取り入れ、組織においてもANAグループの文化として定着するように取り組んでいます。

参加者からの感想

●安全な飛行を支える6つの職種の人たちの様々なトレーニングを知ることができて大変興味深かったです。新型コロナウイルスの拡大が落ち着いたとはいえ、気候変動や地政学的なリスクなどビジネスを行う上で困難な要因が多々ありますが、安全第一で頑張っていただきたい、応援したいと思いました。
●現役の社員の解説があったことで理解を深めることができました。今回の見学や懇談会を通して、空港で働くスタッフの役割、ユニフォームやバッジの違いなどを探す楽しみができ、さらに飛行機に乗ることが楽しみになりました。
●安全に機体を飛ばすことだけが目的なのではなく、快適なフライトや万が一のために日頃から訓練が繰り返し行われていることに感激しました。
●ANAの安全を支える研修施設の様子を見学でき、利用者として安心感を高めることができました。コロナ禍で社員の方々が創意工夫を凝らし、レジリエンスを発揮されたことも、素晴らしいと思いました。

ANAホールディングス ご担当者より

 このたびはANA Blue Baseの見学にご参加いただきまして、ありがとうございました。施設見学や懇談を通じて、ANAグループの安全・安心への取り組みや事業展開など理解を深めていただけましたら幸いです。また、皆さまから貴重なご意見をいただき、大変有意義な機会となりました。皆さまからのお声を真摯に受け止めながら、これから先もANAグループは安全を基盤に、ワクワクで満たされる世界の実現に取り組んでまいります。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
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