企業と生活者懇談会
2023年9月28日 東京
出席企業:東洋製罐グループホールディングス
見学施設:容器文化ミュージアム

「人と容器のかかわりや、容器の歴史・技術・工夫を学ぼう!」

9月28日、東洋製罐グループホールディングスの容器文化ミュージアム(東京都品川区)で「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員13名が参加しました。まず、東洋製罐グループホールディングスから、会社概要と同施設の概要について説明を受けた後、施設見学を実施し、容器包装について理解を深めました。その後、通常は一般公開されていないショールーム「イノベーションギャラリー」も見学し、各グループ会社の製品や、最新の技術を用いた製品などの紹介を受けました。最後に質疑懇談を行い、製品研究や環境対応などのテーマについて意見を交換しました。
東洋製罐グループホールディングスからは、サステナビリティ推進部長遠藤宗広氏、同部コーポレートコミュニケーショングループ高荷弥生氏が出席しました。

東洋製罐グループホールディングスからの説明

■東洋製罐グループの概要
 東洋製罐グループは、1917年の創業以来100年以上にわたり、人々のライフスタイルや社会の変化に応じて、金属・プラスチック・紙・ガラスなどの様々な素材を用いた容器包装を世の中に送り出しています。2022年度の缶、PETボトル(プリフォーム含む)、飲料用・食品用の紙カップのシェアは国内1位で、現在では国内45社・海外49社のグループ会社を擁する世界有数の総合容器メーカーとして、グローバルにビジネスを展開しています。
 同社は2016年に経営理念を「常に新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現を希求して、人類の幸福に貢献します。」と制定しました。次の100年に向けて、素材の開発と加工の技術を軸に、環境に配慮しながら人々の暮らしをより豊かにすることを目指しています。
 容器包装の製造にあたっては本来、同じ形・同じ大きさのものを大量に作ることが求められますが、人々の生活様式が多様化する現代社会においては、誰しもが使いやすいと感じる容器包装を作り、一人ひとりのニーズに対応した製品を提供することも必要になります。また、容器包装を製造する企業として、ポイ捨てや海洋プラスチックごみの問題に取り組むとともに、再生可能材料への転換や、温室効果ガスを削減する製造方法の導入など環境問題への対応が求められています。
 こうした社会的要請に応えるため、2021年、同社は、2050年を見据えた「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」を策定しました。ここでは「多様性への対応」と「持続可能な社会の実現」を目標に掲げ、この達成に向けた2030年までの経営目標と、2025年までの経営計画をバックキャスティングし設定しています。
 東洋製罐グループは、1世紀以上の歩みの中で培った「モノづくり力」を活かして、世界中のあらゆる人々を安心・安全・豊かさでつつむくらしのプラットフォームになることを目指し、これからも挑戦を続けます。

 

■容器文化ミュージアムの概要・特徴
 容器文化ミュージアムは、東洋製罐グループ本社ビルの1階にある容器包装の歴史・技術・工夫などを学べる施設です。この地にはもともと1920年に操業を開始した東洋製罐東京工場がありました。2011年、工場跡地にオフィスビルを建設し、本社機能を移転しました。住宅が多い地域であることから、地域住民の方をはじめ、一般の方に開かれた施設を設置しようという企画が立ち上がり、2012年、容器包装の文化を広く伝えるミュージアムとして開館しました。
 同施設は、大きく6つのエリアに分かれています。入場するとまず、容器の種類や役割が一目で分かる「01 人と容器のかかわり」のパネルがあり、次に、容器包装の素材やパッケージデザインを見て「02 容器包装の役割」を学びます。さらに、製品を触って、クイズに答えながら容器包装の工夫や技術について学べる「03 容器包装NOW!」、容器包装のサステナビリティに関する展示を見て、ごみ分別ゲームを楽しめる「04 環境」、容器包装の生産・流通・消費・回収・再生のサイクルを理解できる「05 循環する容器包装」、明治時代以降の代表的な缶詰ラベルを紹介する「06 缶詰ラベルコレクション」の各エリアへと続きます。
 また、容器包装の歴史を実物・アニメーション・年表などで年代ごとに学べる「人と容器の物語」の展示や、約100年前から使用されていた自動製缶機「インバーテッドボディメーカー」の実物なども見学することができます。施設の最後には、「こんな容器があったらいいな」という「夢の容器」を描くことができる「ドリームボード」が設置されています。
 ミュージアムは東洋製罐グループの情報発信を中心とした構成ではなく、容器包装について広く知ることができるつくりになっています。見学を通じて、容器包装の過去・現在・未来について理解を深めることができます。

見学の様子

■容器包装の役割と工夫
 容器包装には「まもる」「つかいやすく」「つたえる」という3つの大きな役割があります。
 まず、微生物・酸素・光や振動・衝撃などから「まもる」ことは、中身の品質を維持するために大切な役割です。例えば、缶詰は常温で保存するため、真空状態で完全密閉して微生物の侵入を防ぎます。また、栄養ドリンクの瓶は光に弱いビタミンCを保持するため、茶色に着色して光の侵入を防ぎます。他にも、果物や卵などは、ネットキャップを被せたり専用トレーに載せたりすることで、振動・衝撃を緩和し、損傷を防ぐことができます。
 次に、運搬・陳列・廃棄などに「つかいやすく」することは、利便性と効率性の観点から大切な役割です。例えば、シャンプー容器はひと押しで適量が出るように設計されています。また、詰め替え用パウチは切り口が開けやすく、こぼさず移し替えられるようにデザインされています。他にも、ガスを使用する容器は、使用後に安全にガス抜きをして廃棄できるよう工夫がされています。
 最後に、中身の情報を正しく「つたえる」ことは、作り手と使い手を結ぶために重要な役割です。例えば、アルコール飲料であることが分かるよう工夫したパッケージや、アレルギーに関する注意事項を表示した包装を作成することで、誤飲・誤食が発生しないよう、適切な情報伝達を図ることができます。
 参加者は容器に施されている細かな工夫について驚きながらも納得していました。

 

■容器包装の歴史と東洋製罐の設立
 容器包装の歴史は原始時代にさかのぼります。当初、人類は木の葉や貝殻など、身近な自然素材を用いてモノを包んでいました。文明が生まれてまず誕生したのが土器です。土器はモノの保管に適していましたが、「入れる」だけでなく「運ぶ」必要が生じると、革袋・つぼ・たるなども誕生しました。文明の発展に伴って石・鉄・ガラスなどの素材で複雑な容器を作るようになり、利便性が向上していきました。
 1804年、フランスの食品加工業者のニコラ・アペールが瓶詰めによる食品の保存に成功し、密閉容器による食品保存の歴史が始まります。日本では明治時代初期の1877年、殖産興業を目指す政府がアメリカ人技師を招聘し、北海道にさけ缶詰工場を設置したのが始まりです。缶詰は輸出され、外貨の獲得に大きく貢献しました。
1894年に日清戦争、1904年に日露戦争が起きると、缶詰は軍用食料として重宝され、生産工場は急増します。こうした中、先進国の缶詰技術を学ぶためアメリカに留学し、「製缶」と「缶詰」を分業することの重要性を学んだ高碕達之助が、1917年、日本初の容器専門会社として東洋製罐株式会社を設立しました。同社は従来手作業だった製缶に自動製缶機を導入し、大量生産を実現しました。
 さらなる生産量の増加によって、缶詰は軍用食料として用いられるとともに、一般家庭にも広く普及することとなりました。
 参加者は容器包装の歴史について説明を聴きながら、貴重な史料の数々を興味深そうに眺めていました。

 

■サステナブルな容器包装
 戦後の復興、高度経済成長期やバブル期を経て、プラスチックやアルミなどを用いた新たな容器包装が続々と出現します。ペットボトルや飲料用アルミ缶などの登場により暮らしが便利になる一方で、廃棄物の急激な増加や限りある資源の有効活用といった課題が表面化し、1990年頃からは、世界規模で環境問題への関心が高まるようになりました。日本では1995年に「容器包装リサイクル法」が公布され、消費者の「分別排出」、行政の「分別収集」、事業者の「リサイクル」が促進されています。
 地球の未来のために、行政・企業・生活者が一体となって容器包装の3R(リデュース・リユース・リサイクル)に取り組むことがますます重要になっています。


■本社ショールーム「イノベーションギャラリー」
 「イノベーションギャラリー」は東洋製罐グループが取引先企業との対話を創出し、新しい技術へのヒントを提供する場として運営しているショールームで、同グループ各社の技術展示や取引先企業に採用された製品などを紹介しています。
 展示される缶・ガラス・プラスチック・紙容器などの容器包装に包まれた製品は暮らしに欠かせないものばかりで、同グループの容器包装が日常生活に深く根差していることが分かります。奥にはグループ各社の展示エリアがあり、ガラスや金属の精巧な容器などを見学しながら、加工技術力の高さを知ることができます。中央には入れ替え可能な展示エリアがあり、懇談会当日はグループ主催のプライベートショー「Collaboration Fair 2022」と、アジア最大級の包装展示会「TOKYO PACK 2022」の出展品が展示されていました。
 最新技術に関する展示の中でも目を引いたのは、使い捨て紙コップやプラスチックカップに代わる環境配慮型飲料用アルミカップ「Lumisus(ルミサス)」です。独自の技術により製造時に水を使わず、また、アルミは「水平リサイクル」が可能であることから、環境負荷の低減を実現できます。すでにテーマパークやスポーツイベントなどで使用されており、徐々に広がりを見せています。
 容器包装の「今」と「未来」の姿を知ることができる興味深い展示に参加者は関心を寄せていました。

懇談会の概要

社会広聴会員:
新型コロナウイルス感染症の流行は経営に影響しましたか。
東洋製罐グループホールディングス:
衛生意識の変化や巣ごもり需要の高まりなどにより、消毒液の容器や持ち帰り用容器などの製品が売り上げを伸ばしました。一方で、落ち込んでいた飲料用ペットボトルやカフェ向け紙コップなどの製品の需要は、5類感染症への移行を受けて回復傾向にあります。今後も地政学リスクや為替変動などに注視しながら、健全な経営を目指していきたいと考えております。

 

社会広聴会員:
容器包装の素材の研究開発はどのように行われているのですか。
東洋製罐グループホールディングス:
ホールディングスの綜合研究所と新規事業推進室がグループ各社の研究開発組織と連携を取りながら素材の研究を進めています。実際に製品化した研究事例も多数あり、例えば、海藻の生育に必要なリン・ケイ素・鉄などの成分が海中でゆっくり水に溶けだすよう調整した緩水溶性ガラス「イオンカルチャー」は、環境に優しい素材として消波ブロックに使用され、藻場の養殖や漁場造成に使われています。

 

社会広聴会員:
容器包装の廃棄に関する対応状況について教えてください。
東洋製罐グループホールディングス:
飲料缶が普及し始めた1973年、関係企業などと「あき缶処理対策協会」を設立しました。ポイ捨て防止の啓発活動などを行ってきましたが、2001年、「スチール缶リサイクル協会」に名称変更し、分別回収に向けた啓発活動を行っています。他にもペットボトル・ガラス瓶などの各種リサイクル協会に加盟し、高リサイクル率の維持に取り組んでいます。

 

社会広聴会員:
容器包装の廃棄について、消費者が対応すべきことがあれば知りたいです。
東洋製罐グループホールディングス:
使い終わった容器は「分ければ資源、混ぜればごみ」です。きれいに洗った状態で、識別マークに従って適切に分別いただくよう、ご協力をいただければと考えております。

参加者からの感想

●イノベーションギャラリーの展示品は暮らしになくてはならない必需品の容器ばかりで驚きました。ミュージアムは容器包装の歴史や文化が分かりやすく紹介されていて、地域の学生や住民だけでなく、もっと様々な方に広く利用してほしい施設だと思いました。
●丁寧な説明をしていただき、普段はあまり意識してこなかった、黒子的ともいえる「容器」の役割や多様性、そして重要性を知るとても良い機会になりました。また、ミュージアム開設の目的を知り、その企業姿勢に好感と信頼が増しました。
●東洋製罐グループが将来を見据えた長期的な目標を設定し、そこに到達するために今どのような行動を起こすべきか、という視点で経営をされていることを知り感心しました。従業員、製品を使う消費者、社会、地球環境などの全てに配慮されていることが、今後の革新的な製品開発につながっていくのだろうと感じました。
●容器包装の全貌を見せていただき感動しました。保存性・安全性・機能性・ユニバーサルデザイン視点の利便性・リサイクル性などを追求し続ける企業姿勢に頭が下がります。

東洋製罐グループホールディングス ご担当者より

 この度は、貴重な機会をいただきまして、ありがとうございました。当社グループはBtoB企業であるため、消費者の方々と直接会話することが少ないのですが、「容器会社の取り組みをもっとアピールしてほしい。」とのお声をいただきまして、広報活動の重要さを再認識いたしました。皆さまからのお言葉を胸に、情報発信の強化に努めてまいりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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