企業と生活者懇談会
2001年7月18日 神奈川
出席企業:日産自動車
見学施設:追浜工場

「自動車産業における環境対策」

日産自動車からの説明
会社概要の説明
 私どもは’33年、小型乗用車ダットサンと自動車部品の製造・販売を行う会社としてスタートしました。社名の「日産」は、前身である「日本産業」の略称です。
この追浜工場は、国内初の本格的な乗用車工場として、’61年に操業を開始し、以降、溶接ロボットなど最先端技術導入の先駆的役割を担ってきました。現在 では、ブルーバードやマーチを始め、輸出仕様のマキシマも生産しており、隣接する専用埠頭から主に北米などへ輸出も行うなど、当社の主力工場となっていま す。
環境問題への対応は、環境統括委員会を設け、環境行動計画に基づいて、燃費・排出ガス・騒音・省エネ・廃棄物など各項目ごとに目標値の設定や進捗状況の監 視を行っています。環境マネジメントの国際規格ISO14001も、国内・海外の主要生産工場はもとより、商品・開発部門でも取得済みです。私どもは製品 開発から生産・使用・使用後の処理までクルマのライフサイクル全てにおいて、環境対応と経済性を両立させて、お客様に意味のある現実的な環境調和型技術・ 商品を提供し続けていきたいと考えています。
日産自動車への質問と回答
レポーター:

 工場の近くに住んでいるのだが、水処理と焼却処理について教えてほしい。

日産自動車:

 まず工場の排水ですが、工程から出るものと生活排水の合計で、1日に約3千m3処理しています。敷地内に集中処理施設を設け、凝集剤で汚濁物を分離させ、さらに上澄みを活性汚泥法で処理し、最後に活性炭でろ過するという3段階の排水処理を行っています。これにより横須賀市の厳しい水質の指導基準を満たした上で近隣の海へ戻すと同時に、一部は工場内のトイレなどで再利用しています。
 次に焼却処理ですが、追浜工場から出る木屑・廃プラ・汚泥などのほか、当社横浜工場や関連会社の産業廃棄物も扱っています。ダイオキシン対策は、センサーによる燃焼温度の制御や活性炭を噴霧することなどにより行っています。

レポーター:

 環境に対する取り組みは、ルノーとの提携以来、変わったか。あるいは、儲からなければ環境配慮は出来ないものか。

日産自動車:

 当社の環境保全活動は’70年代から既に進めており、地球環境サミット開催などを契機として、’90年代から活動を一層充実させています。ルノーとの提携前後で取り組みの内容は大きく変わっていませんが、他の活動同様、目的がより一層明確になり、その実現性が高まったという点では変わったと思います。例えば、’99年秋に展開した「ルネッサンスキャンペーン」のテレビCMでは、6分野でのルネッサンス(再生・復活)を宣言しましたが、「環境」もその1つです。また、社長のゴーンは常に「環境対応と経済性を両立させる」と言っております。つまり、「環境に配慮した、売れるクルマを作る」ということです。

レポーター:

 ブルーバードシルフィを、超低排出ガス車だから購入したが、燃費が思ったほど良くない。環境対応と燃費に対する考え方を教えてほしい。

日産自動車:

 クルマの二酸化炭素総排出量の約90%は、走行時に発生します。ですから燃費の良いクルマを作らなければなりません。これは、私どもが開発した直噴エンジンと無段変速機を組み合わせることで、最も効率的な燃焼とパワー伝達を実現しています。
 ブルーバードシルフィは、2010年の燃費基準を既にクリアしています。その上で、排出ガス中のNOx(窒素酸化物)、HC(炭化水素)の排出レベルも、現在の規制値の1/8を達成しています。こうした技術を、特別なクルマではなく通常の車に搭載しリーズナブルに提供する、つまり「お客さまにとって意味のある現実的な環境調和技術を提供する」ことが私どものポリシーです。今後は、燃費と排出ガスや、燃費と走る楽しさの両立、リサイクルの容易性などが重要になると考えています。

レポーター:

 電気自動車や燃料電池車などクリーンエネルギー車の開発状況はどうか。国の政策との連動、他企業との連携も教えてほしい。

日産自動車:

 私どもは超小型電気自動車「ハイパーミニ」を国内で約百台販売しています。四百万円の高価格ですが、横浜市・海老名市・京都市で行われている未来交通システムの実証実験に採用されています。
 また燃料電池車は、2005年頃には実用化ができると考えています。ただし、例えば水素電池を利用するタイプでは、取り扱いの難しい水素を高圧で貯蔵するタンクが必要であり、関連するメーカーとの連携が重要となってきます。
 一方で、クリーンエネルギー車を普及させるには、燃料を供給するステーションなどインフラの整備も重要になります。今後は、自動車メーカーだけでなく、エネルギー業界、国や地方自治体などとの連携も不可欠と考えています。

レポーター:

 資料を読んで初めて環境対策の取り組みを理解したが、5月の「中央官庁での低公害車採用検討」の記事では、それが伝わってこなかった。実際はどうなのか。

日産自動車:

 私どもも、報道には驚きました。「低公害車」をどのように定義するかの問題ですが、ハイブリッド車や電気自動車だけが低公害車という認識も依然としてあるのでしょう。
 私どものブルーバードシルフィは、国土交通省の基準である10・15モードのNOxやHCの排出量の値が、現在販売されているU-LEV(超低排出ガス車)の中で最も低く、ガソリン乗用車ではトップです。もちろん、同じくU-LEVの認定を受けているハイブリッド車をも上回っています。
 私どもは、イメージや構造ではなく性能で商品を選択していただきたいと考えており、そのためには、お客さまに正確な情報を知っていただきたいし、知っていただくための努力を怠ってはいけないと考えています。現在、工場見学はもちろん、小学校での総合学習の時間など様々な機会を得て、市民の皆様や未来を担う子供たちとの対話を続けています。また、お客さまに当社製品の環境性能などをご説明する環境ノートや環境報告書の発行などを通じて、今後も積極的に説明責任を果たしていきたいと考えています。

レポーター:

 ディーゼル車というと環境に良くないというイメージを持つが、実際にはどうなのか。

日産自動車:

 ディーゼルエンジンは、燃焼効率も高く走行に関する維持経費が安価なため、幅広いニーズがあります。私どもが開発した直噴ディーゼルエンジンは、新技術の導入により燃費を格段に向上させると同時に、従来は困難だった排出ガス中のNOxと黒鉛の両方を減らすことに成功しています。最新のガソリン車と比べれば、排出ガスの面ではやや劣りますが、今後、更に改良を重ねて、燃費向上(CO2の削減)と排出ガス低減(NOx、HCの削減)の両方の課題を解決していきたいと考えています。

レポーター:

 新技術の開発も大切だが、数が圧倒的に多い中古車に対して同様の技術改良を加えるなど、ライフサイクルを考慮して販売した車へのケアも必要ではないか。

日産自動車:

 こうしたニーズが増えてくると、例えばクルマの環境性能をアップするなど「環境チューニング」のようなビジネスが、いずれ成立するかもしれません。しかし現在では、そうしたニーズはさほど多くなく、また、技術的にも課題がたくさんあると考えています。現段階では、車検などの際に部品交換を始めとする必要な整備を行っていただき、クルマを最適な状態に保っていただくことが基本になります。  
 一方で、私どもは「ニッサングリーンパーツ」という取り組みを始めています。再利用可能な部品を、部品販売会社を通じて全国で販売するもので、エンジンやトランスミッションなどの重要部品は、保証も付けて販売しています。例えば、お客様がバンパーを交換される場合、新品かリユース部品かを選択できることになり、環境面に配慮されるお客様には部品を安価にご提供できます。私どもは、この制度をもっと積極的に皆様にお伝えしていこうと考えています。

レポーター:

 ブルーバードシルフィがU-LEV車のトップクラスと言っても、ハイブリッド車の環境性能もまた評価されている。日産は、ハイブリッド車をどのように考えているのか。

日産自動車:

 私どもは、「ティーノハイブリッド」を百台限定で発売しました。即完売となり、社会の関心の高さを改めて感じましたが、現段階では、適切な価格で量産し皆様にご提供できる状態になっていません。今後、技術の成熟度を高めながら商品化の時期を見極めていきたいと考えています。
 現在、ハイブリッド車に対する社会の関心は非常に高いのですが、概念だけが先行している感も否めません。先ほど申し上げましたように、現段階では、燃費はハイブリッド車が優れていますが、排出ガスのクリーンさではU-LEVのほうが優れています。また、自動車の環境負荷を走行時点だけでなくライフサイクル全体で考えた場合、電池やモーターの交換頻度はもちろん、その処理に係るコストや環境負荷まで考慮する必要があります。現在、様々な業界で多くの検討がされていますが、未だ明確な結論は出ていません。また、渋滞の多い都市部での走行と、渋滞の少ない地域や高速道路での走行(ガソリン消費量の多い状況)とを比較すると、ハイブリッドの利点は大きく減少してしまいます。
 最終的に、環境負荷低減に役立つのは何か」を、今後見極めていかなければなりません。現実に私どもは、ハイブリッドに性能面で対抗できるU-LEVという技術を持っていますし、こうした事を、私どもがステークホルダー(会社を取り巻く利害関係者。お客さまのほか、株主や社員、行政機関なども含む)の皆様にご説明していく必要があると考えています。

出席者の感想から
日産車愛用者として、工場見学と担当者との懇談の場を持てたことは有意義だった。走行時のCO2の排出を減らすには低燃費が絶対条件であり、そのた めには小型化・軽量化を図る必要がある。しかしおそらく、販売利益は大型車のほうが上がる。そういうメーカー側のジレンマを感じた。

国立環境研究所のシンポジウムで、国交省認定の10・15モードの燃費値と市民レベルでの実測地の乖離が話題になった。メーカーは、こうしたユーザー側の見方も理解して、様々な取り組みに活かして欲しい。

ゴーン社長の下での再建が、まずは目標を突破し、多くの人が期待の目で見ていると思う。環境に配慮した製品開発や社会貢献活動、経営ソフト面の改革など、もっと社会にPRしたほうが良いと思う。

工場は、小学校時代に見学した30年前と変わらない感じがした。こうした地道なモノ作りの過程は、ソフト化が進む今こそ、子供達にみせてあげたいと感じ る。 「ハイブリッド車は環境に良い」と信じ込んでいた。ライフサイクルを通じた環境負荷はまだ明確になっていないという説明を聞き、意外に感じる反面、有益 だった。
以 上
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