企業と生活者懇談会
2009年2月2日 東京
出席企業:帝国ホテル
見学施設:帝国ホテル東京

「おもてなしの心について考える」

2月2日、東京都千代田区にある帝国ホテルで、「企業と生活者懇談会」を開催しました。
21名の社会広聴会員が参加し、ホテルを見学しました。その後、開業以来受け継がれてきた帝国ホテルのDNAである「おもてなしの心」について、客室課一筋50年の宿泊部特別社員の小池幸子氏から聞くとともに、質疑懇談を行いました。帝国ホテルからは、小池氏に加え、ホテル事業統括部の冨樫総平広報課長、広報課の宮崎真理副支配人、松原由紀主事、作田宣彦主事が出席しました。
帝国ホテルからの説明
■帝国ホテルの起源■
 1887年(明治20年)に設立された有限責任東京ホテル会社は、1890年(明治23年)に、欧化政策の一環として外国人への接遇も可能なグランドホテル「帝国ホテル」を開業しました。それ以前の外国使節団を接遇する施設は、鹿鳴館だけで、食事をする館としての役割しか果たしていませんでした。帝国ホテルは日本初の外国人向け宿泊設備が整った迎賓館としてスタートし、戦後は連合軍の宿舎として接収されるなど大変な時代もありましたが、その後、日本のホテル業界の発展に先駆者として役割を果たしながら、数々のチャレンジを続けています。そして、そこから生まれた「初めて」は、人々の生活と文化の向上に貢献しています。

■「おもてなしの心」を入れた「初めてものがたり」■
 ホテルウエディング、バイキング、ディナーショー、山岳リゾート、ホテル内郵便局など、現在のホテルでは当たり前の光景ですが、これらはすべて帝国ホテルが創めたものです。
 昭和初期までは神前挙式が一般的でしたが、1923年(大正12年)に関東大震災が発生し、周りの神社などが損壊してしまいました。式を挙げる場所がないと困っていた人たちの役に立ちたいと、ホテル内に神前挙式場を造り、写真室、美容室を備えました。これが現代のホテルウエディングのきっかけです。
 また、世界の人たちにも喜ばれる料理を、ということから他国の料理にも目を向けました。特に、魚介類、肉、薫製、酢漬など様々な種類の料理を好みの量だけ自由に食べられるスカンディナビアの伝統料理を日本に初めて紹介しました。現在のビュッフェスタイルの代名詞として親しまれている「バイキング」という言葉は、このレストランの店名「インペリアルバイキング」から生まれました。
 それ以外にも、1933年(昭和8年)に日本新八景の上高地(長野県)に日本初の山岳リゾートホテルを建設、1964年(昭和39年)開催の東京オリンピックでは選手村の食堂を担当、また 1983年(昭和58年)には日本初の大型複合ホテル(客室、オフィス、ショップなどが一体)をオープンし、従来にない新しいホテル空間を創り出しました。これら「日本初」は帝国ホテルのDNA、チャレンジ精神から生まれたものですが、そこには必ずお客さまを第一に考え、楽しませたいという「おもてなしの心」がたっぷり入っています。
 その心は世界各地のVIPたちも魅了しています。アインシュタイン、チャプリン、ヘレン・ケラー、ベーブ・ルース、マリリン・モンローなどなど、帝国ホテルを訪れた各界著名人は数知れません。

■ホテル内の見学■
 帝国ホテルの歴史や概要の説明を受けた後、ホテル内の見学をしました。まず通常の正面玄関とは別に存在するVIP用玄関。このような独立した玄関を設けているのは帝国ホテルだけですが、VIPを特別扱いするというより、安全を優先し、すべてのお客さまにご不便をお掛けしないという気配りからです。その言葉どおり、特別華美ではないシンプルな玄関です。
 続いてセミスイートタイプの客室や、ミュージックルーム、会議室、サロンなども見学しました。部屋の隅々までお客さまを気遣う配慮がされていました。
 館内のすべての情報を把握するホテルの中枢、電話交換台に入りました。オペレーター全員の机には、毎日笑顔をチェックするための鏡があります。声は表情まで伝えてしまうもの、いつも明るく親切な対応を心掛ける帝国ホテルの工夫です。美しく正しい日本語を発するために毎日行われている発生練習も体験しました。
帝国ホテルへの質問と回答
社会広聴会員:
ゲストをおもてなしする上で、最も大切にしていること、心掛けていることは何ですか。
帝国ホテル:
一番大切にしていることは「心」です。与えられた仕事をこなしたり、完璧なマナーを身に付けても、そこに心が入っていなければなりません。最近のお客さまは十人十色どころか、一人十色で、同じ一人の方でも趣味嗜好は様々で、その好みも変化します。お一人おひとりの個性をすべて記憶し、ご宿泊時には、家に居るようなくつろげる快適な場所をつくり上げようと努めています。
お客さまの動向や様子から何を求めているかを察知する力、それにこたえられる力が大事です。しかし、出過ぎたりやり過ぎないように一歩引くことも必要です。
行動基準として、挨拶、清潔、身だしなみ、感謝、気配り、謙虚、知識、創意、挑戦を挙げていますが、これらを磨くことでさらにお客さまに優れたサービスと商品を提供できると信じています。
お客さまを第一に考えたこだわりがたくさんあります。例えば、「海外のお客さまのため、両替用の小銭をドアマンが常にポケットに入れている」「誤って大事なメモを捨ててしまうかもしれないので、紙くずは一日捨てずに取っておく」「ランドリーに200種類のボタンを常備している」「眠そうなお客さまにはオペレーターが2回モーニングコールする」などなど。そして、必ずそこに「心」を入れています。
 
社会広聴会員:
どのような社員教育を行っているのですか。
帝国ホテル:
帝国ホテルの強みは「人」であると考えており、当ホテルのDNAや心、お客さまが求めているものなどの教育に加え、スキルの向上もサポートしています。ホテルマンとして必要なことをまず学び、それ以降は職種ごとにOJTを行い、さらにスキルを磨くため、海外や大使館、その他様々な場所に派遣されることもあります。例えば、精肉店に修業に行く料理人もいます。これは肉の食べごろを見極め、それに合った調理法を判断できるようにするためです。食材のプロと料理人の知識が融合して可能になるプロの技が生まれます。このように、各職場には「染み抜き名人」「家具の補修名人」など、ユニークなプロがたくさんいます。
 
社会広聴会員:
近年、外資系の高級ホテルが進出している中、帝国ホテルはどのような戦略を考えていますか。
帝国ホテル:
我々も含め国内のホテルは、グランドホテル(宿泊のみならず、様々な施設を含むホテル)が主流です。一方、外資系のホテルは客層を絞った宿泊に特化しており、形態が異なります。当ホテルは、外資系と同じグレードの部屋もあれば、ビジネスユースに適した部屋もあり、幅広い客層の需要にこたえています。また、お得な料金体系のレディースプラン、ジャズフェスティバルなど付加価値のあるサービス、朝食を昼食に変更可能にするなど、多岐にわたるプランを提供しています。グランドホテルの機能を生かしながら、時代によりお客さまが求めるニーズにおこたえしていく、というのが我々の戦略です。
 
社会広聴会員:
環境対策で行っていることはありますか。
帝国ホテル:
1983年から客室の排水を浄化し、バックスペースのトイレなどで再利用し、ホテルで年間26日分の節水効果を上げています。また、屋上に太陽光発電のパネルを設置すると同時に、既存のホテルとしては初めての屋上緑化を行い、外気温の影響を抑えることで、エネルギー削減にもつなげています。また、宴会場の化粧室や廊下などパブリックスペースの一部にLEDの照明を使用していますが、従来のLEDではまぶしすぎたので、目にやさしいものを開発してもらいました。常にお客さまにとって最善のものを提供しながら、環境対策を行っています。
 
社会広聴会員:
食の安全への取り組みと、食べ残しやゴミの処理などについて教えてください。
帝国ホテル:
社内に「食の安心と安全委員会」を設置し、トレーサビリティー(追跡可能性)や輸入物の安全性の確認などを行い、その調査を帝国ホテルの食の仕組みに反映しています。また、食べ残しについては、お客さまの食べる量や内容の記録を調理場にフィードバックし、メニューを開発することにより、無駄なものを出さないようにしています。しかし、生ゴミは必ず出るので、それを乾燥し、たい肥としてリサイクルしています。従来に比べ、ゴミの量が70%減り、年間約1000万円のコストを削減しています。
 
社会広聴会員:
大規模改修をされていますが、その意義について教えてください。
帝国ホテル:
大規模な改修は15~20年のサイクルで行っています。常日ごろからお客さまや従業員の意見を聞き、デザインと機能(お客さまの快適さなど)のバランスを考えた上で、改修を行います。我々は、伝統は革新とともにあると考えます。お客さまの要望にこたえる改革はこれからも続けていきます。
 
参加者の感想から
●客室課一筋50年の小池氏が語った「おもてなしには心が入っていなければいけません」という言葉が忘れられません。小池氏のような方々が、帝国ホテルのサービスの心を、後輩たちに代々受け継いでいくのだと感じました。

●見学の時、社員用の通路などを通りましたが、質素で、照明の削減などを実施されており、コストダウンや環境に配慮していることを知りました。一方で、 VIPルームなどは、豪華で快適、細かな点まで気配りされており、ホテル業としてのコスト配分のバランスを上手に取られていると感じました。

●今回の見学と懇親会で、本物に触れ、歴史や伝統を学び、知らないうちに快適さを提供していただていると、改めて感謝の気持ちがわきました。

●老若男女、国籍、宗教などに即応した応対、接遇態勢に感服しました。

お問合せ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
pagetop