企業と生活者懇談会
2008年9月30日 兵庫
出席企業:神戸製鋼所
見学施設:神戸製鉄所、灘浜サイエンススクエア

「地域密着の製鉄所」

2008年9月30日、兵庫県神戸市にある神戸製鋼所の神戸製鉄所で、「企業と生活者懇談会」を開催しました。社会広聴会員14名が参加し、神戸製鉄所や同製鉄所敷地内にあり電力卸供給事業を行っている火力発電所の概要説明を受け、神戸製鉄所第7線材工場、神鋼神戸発電所、灘浜サイエンススクエアを見学後、質疑懇談を行いました。
神戸製鋼所からは、泉博二執行役員、藤森直樹神戸製鉄所副所長、赤堀俊文神戸製鉄所業務部副部長、小泉富士雄神戸製鉄所計画室主任部員、田中繁好秘書広報部主任部員が出席しました。
神戸製鋼所からの説明
■神戸製鉄所の概要■
 神戸製鉄所は、神戸市灘浜に位置し、敷地面積は107万平米、およそ1300人の従業員(含、協力会社)が働いています。
 1959年(昭和34年)の第1高炉の火入れから、2009年で操業50周年を迎えます。現在は1966年(昭和41年)に完成し、2007年(平成19年)12月に24年ぶりの大規模改修工事を終えた第3高炉1基が稼動しています。生産規模は、年間およそ130万トンで高炉事業所としては国内最少クラスですが、最高レベルの鋼をつくる製鉄所として世界的に有名です。
 ここでは、主に自動車向けの部品の素材となる、線材と棒鋼を生産しています。自動車のエンジン部分や、動力をタイヤに伝える部分に利用される鋼は、摩耗や耐久性に優れた特殊なものが要求されます。神戸製鉄所の、高い技術と多品種少量生産できることを生かして製造される「弁ばね(車のエンジンの燃料の供給調整に使われる部品)」は、全世界の自動車の50%に使われ、圧倒的なシェアを誇っています。

■特殊鋼ができるまで■
 特殊鋼の原料は、すべて海外から輸入しています。高炉の中に、ペレット(粉状の鉄鉱石を焼き固めたもの)とコークス(石炭を蒸し焼きにしたもの)を交互に流し入れ、粉砕した石炭を高炉へ吹き込み、燃焼させ、発生した熱とガスによってペレットを還元・溶融し、銑鉄をつくります。その後、銑鉄から不純物(リン、イオウなど)を取り除く工程、そして強い鋼をつくるために合金(クロムやニッケルなど)を添加する工程を経て、品質の優れた鋼をつくり出します。溶けた鋼を鋳型に注ぎ込み、「ブルーム」と呼ばれる鋳片を製造します。これは、次の分塊圧延工程で155mm角サイズの「ビレット」と呼ばれる鋼片になり、表面や内部の傷の有無など、品質を厳しく検査します。検査を通るとコイル状に線材圧延、あるいは棒鋼圧延され出荷されます。お客さまの要望や用途に応じて、神戸製鉄所では、およそ1500種類の鋼を製造しています。第7線材工場の最新鋭の装置を駆使し、きめ細かくコントロールされた線材は、精整コンベヤーから直接立体倉庫に搬入され、傷が付かないよう細心の注意を払って保管しています。

■神鋼神戸発電所■
 神鋼神戸発電所は、製鉄所が培ってきた自家発電技術やノウハウを生かし、最新鋭の設備を導入して建設された石炭火力発電所です。事業は、1997~98 年(平成9~10年)に関西電力との間に電力受給契約を締結したことにより始まりました。2002年(平成14年)に1号機が運転を開始し、次いで2004年(平成16年)に運転開始した2号機とともに、現在では2機が稼働(総出力140万キロワット)し、神戸市のピーク時の電力需要(約200万キロワット)の約70%を賄うことができます。
 この発電所は、「都市型発電所」を目指しています。キーワードは、「地域との共生」で、具体的には以下の3つのポイントを元に発電事業を運営しています。最高水準の環境対策を施し、神戸市の電力自給率の向上と災害に強い都市づくりを目指すこと、この発電所で発生するエネルギーを有効活用すること、地域の人々が集い楽しむような施設を提供し運営することです。

■エネルギーの有効活用と地域との交流■
 地域の省エネルギーの推進と、発電所の排熱の有効活用のために、近隣の酒造メーカーに蒸気を供給しています。酒造会社では、この蒸気を蒸米や火入れ(殺菌)、洗瓶などに利用しています。また、発電エネルギーを活用した健康温浴施設「灘浜ガーデンバーデン」は、災害時には防火・消火用水、生活用水として活用できるなど、地域防災にも配慮しています。製鉄、発電、エネルギー、環境について学べる体感型学習施設の「灘浜サイエンススクエア」や、市民に開放している、テニスコート「灘浜スポーツゾーン」は、地域の交流に役立っています。

■見学の様子■
 第7線材工場では、約1000℃に加熱されたビレットが溝のついたロールによって圧延され、徐々に断面積が小さくなり、線材になっていく様子を見学しました。また、発電所では、神戸市内が一望できる屋上から、地域と密着して発展してきた様子について、説明を受けました。隣接する灘浜サイエンススクエアでは、子どもたちに大人気のライドシアターに乗り、実際に見ることのできない高炉の中や発電所の内部を、迫力ある映像で疑似体験しました。
神戸製鋼所への質問と回答
社会広聴会員:
経営方針について教えてください。
神戸製鋼所:
一言で言えば、強みのある製品の生産に注力することを掲げています。例えば、現在は自動車部品に力を入れていますが、誰もがつくれるわけではない、技術の蓄積を必要とするもの、つくりにくいものを「オンリーワン製品」と位置付け、その生産比率を高めることを経営戦略としています。神戸製鋼の鉄鋼生産量は、世界の鉄鋼業界1位の企業(約116百万トン)と比べ、38位(約8百万トン)と決して多くはありません。経営方針は、量ではなく品質や技術で勝負していくことといえます。
 
社会広聴会員:
中国や、新興国の急速な成長に伴い、資源価格が高騰しています。影響を教えてください。
神戸製鋼所:
現在の中国は、日本の高度成長期と同じような発展を遂げています。これに伴い、鉄の需要が高まり、鉄鉱石や石炭などの原料価格が暴騰しています。1年前の値段と比較すると、石炭はおよそ3倍、鉄鉱石は65~98%もの値上がりとなっています。当社単独のコストダウンでは到底太刀打ちできないため、やむを得ず、お客さまである自動車や造船メーカーなどにも値上げをお願いしました。ただ、原料高騰の影響を受けていても、機械事業では、資源開発に伴う機械類の売り上げが伸びるなどのプラス面もあり、神鋼グループ全体では打撃ばかりではありません。
 
社会広聴会員:
環境への取り組みについて教えてください。
神戸製鋼所:
環境マネジメントシステムの認証(ISO)を、本社だけでなく、グループ会社でも積極的に取得しています。また、鉄鉱石の中に含まれる不純物(スラグ)をセメントの原料や、アスファルトの下地材にリサイクルしています。廃プラスチックも細かく砕いて高炉の原料として活用しています。
 
社会広聴会員:
どのような社会貢献活動を行っていますか。
神戸製鋼所:
事業所のある地域の皆さまとの交流では、地元の学校に出向いて野球の指導や、ラグビーを通じた地域への貢献活動などを行っています。また、最近では西宮市にある兵庫県立の芸術文化センターの命名権を取得し、コベルコ大ホールとして資金サポートを行い、スポーツだけでなく文化貢献にも努めています。地元の方々と日ごろから交流を持ってこそ、地域に受け入れてもらえると考えています。
 
社会広聴会員:
防災についてはどのように対応していますか。
神戸製鋼所:
グループ会社を含め、全社的に年に一度、防災会議を開催しています。これに基づき、各事業所でも防災対策を行っています。当製鉄所では、石油コンビナートなどの災害法や消防法に基づき、製鉄所長をトップに火災の早期発見や未然防止に取り組んでいます。自衛でも消防車2台、救急車1台を保有していますので、事故が発生した際は、通報はもちろんのこと、迅速な対応をとり、近隣の住民の皆さまにご迷惑を掛けることのないように心掛けています。
 
社会広聴会員:
非鉄の生産について教えてください。
神戸製鋼所:
当社では、アルミや銅、チタンを製造しています。 アルミは、飲料缶材、HDD用アルミディスク基盤材、鉄道車両や自動車部品、ボンネットやトランクなどに利用されています。特に缶材は、およそ3つに1つが、当社製の素材が使われています。銅は、半導体のリードフレームや自動車などの電装品で用いられる端子コネクターに使われています。また、チタンは、軽くて強度があるので、航空機のエンジン部品やロケットの燃料タンクに用いられています。合金チタンでは、国内随一の実績を持っています。
 
社会広聴会員:
なぜ、発電所の原料を石炭にしたのですか。
神戸製鋼所:
製鉄業で石炭を利用しているので、石炭のハンドリングに慣れていたことが、第一の理由です。また、石炭は石油や天然ガスに比べて世界各地に点在し、埋蔵量が多いため、安定して確保できるメリットがあります。過去に数度、エネルギーショックを経験しているため、資源が分散し、安心して燃料源が確保できる石炭が適していると判断し、石炭発電所とすることになりました。
 
社会広聴会員:
技術の継承についての対策を教えてください。
神戸製鋼所:
約700名いる現場の技能者は、30代以下が約4割、40代後半以上が約4割で、その間の世代がいない状況です。製鉄所では、10数年前から技能伝承をプロジェクトとして考えてきました。具体的には、誰が、誰に対して、何を、いつまでに教えるというマンツーマン対策をとっています。安全、防災、機械保全、操業技術など、3年間で教えるべきことをリストアップし、その全項目にわたり、個人ごとに計画を出し、5段階評価をしています。現在は、その成果が徐々に出てきたと感じているところですが、まだ手探りです。技術の継承ももちろんですが、仲間意識、コミュニケーションを若い世代に伝えることに、最も心を砕いています。
 
参加者の感想から
●製鉄産業も新興国に追い上げられている中で、企業がどのような対応をしているかに興味があり、参加しました。自動車部品などに使われる高品質の製品づくりに特化していることを知り、神戸製鋼所の技術水準の高さを再認識しました。

●ものづくりのたゆまぬ研さんは、将来の日本を豊かにする大きな力だと思います。若者が、どれだけその大切さに気付き、技術の継承ができるか、また継承させられるかがカギになると思いました。

●鉄鋼関連事業、電力供給事業ほか、多方面にわたるものづくり事業が、我々の身近な生活の場に生かされていることを知り、驚きました。また、企業理念の「信頼」を合言葉に、CSRや環境問題への対応に、有言実行で取り組んでいる姿に感銘を受けました。

●排出蒸気は、一部の酒造会社に供給するだけではなく、国、県、地域も一緒になって経費を負担し、地域住民の生活向上や福祉に活用したり、蒸気を活用する企業を誘致して、住民との共同事業ができると面白いと思いました。

お問合せ先
(財)経済広報センター 国内広報部
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