企業と生活者懇談会
2003年12月19日 福岡
出席企業:西日本オートリサイクル
見学施設:西日本オートリサイクル工場

「企業と環境を考える」


日本オートリサイクルからの説明
■なぜ、車のリサイクルが必要か■
 自動車製造業はわが国のリーディング産業に成長しました。その一方で、年間約500万台といわれる使用済み自動車の処理については、対応が後手に回っているのが実態です。これらは、解体業者においてリサイクル処理が行われています。瀬戸内海などで世間の注目を集めたように、大量に発生するシュレッダーダスト(最終破砕物)の不法投棄問題が表面化し、最終処分に関して多くの課題が指摘されています。廃車の離島や過疎地、空き地への不法投棄、野積みなどがそれで、我々の日常生活を脅かす場面も散見されます。
 車を大量生産する現代、車を製造から消費までエコロジーの中でどのように循環させたらよいのか、いま各方面でシステムづくりの検討が進められています。

■西日本オートリサイクルとは■
 車の解体作業において、シュレッダーダストを出さない「シュレッダーレス」を掲げ、再利用・再生可能な部材の徹底回収を行っているのが、西日本オートリサイクルです。2002年度で既に90%を超えるリサイクル率を達成しています。2005年には95%のリサイクル率を達成する見込みです。これは国が 2015年に目指しているレベルで、それを10年前倒しで達成することとなり、注目を集めています。
 西日本オートリサイクルは1999年、吉川工業(株)と三井物産(株)、新日本製鐵(株)、日鐵運輸(株)、九州メタル産業(株)が株主となり、資本金1億円で設立されました。操業開始は2000年2月からです。株主の吉川工業は、新日鐵の協力会社として1920年に創業された地場企業です。鉄スクラップ処理に関しては、80年間の長きにわたって培ったノウハウがあります。シュレッダーダストの問題が世間の注目を集めてきたのと軌を一にして、鉄をめぐるもうひとつの問題が顕在化していました。鉄源としてリサイクルされるスクラップの品質低下が目立ちはじめ、高品位の鉄スクラップをどうやって確保したらよいかという問題です。
 従来、外装パーツ、機能パーツを除いた後の廃車ガラは、シュレッダー業者に持ち込まれて破砕処理され、残ったダスト(最終破砕物)は埋め立てに回されています。ところが、この中には、鉛、水銀、油などが含まれており、適正に処理されなければ、環境汚染の原因になりかねません。
 吉川工業はこれを避けるためには、徹底した部材回収しかないという結論に至りました。1996年、自動車製造時の組み立てラインにヒントを得て、「一直線上の自動車解体ライン」を世界で初めて確立しました。この方式に日本自動車工業会も注目し、1996年から共同分解実験を行っています。1年後の 1997年に、北九州市が「北九州エコタウンプラン」を策定、響灘地区に総合環境コンビナートを展開していくことになりました。1999年、吉川工業に蓄積された技術、ノウハウをベースに、西日本オートリサイクルが設立されたのです。

■会社の立地■
 西日本オートリサイクルは、若松区の響灘工業団地内の「総合環境コンビナート・リサイクル団地」地区に位置しています。この地区は北九州市エコタウンプランに基づいて整備されたエリアです。エコタウンは、各種リサイクル施設が集合する「総合環境コンビナート・リサイクル団地」と、大学・県・市の研究所などが置かれている「実証研究エリア」で構成されます。環境リサイクルの試みを産学で追求する巨大実験場の趣があります。

■自動車解体のプロセス■
 自動車解体は次のようなプロセスをたどります。<1>リサイクル部品(ドア、フロントガラス等)を回収する「パーツ回収工程」、<2>車内の各種液状資源を回収する「液抜き工程」、<3>内装・内蔵品(シート・タイヤ・バッテリー等)を回収する「前処理工程」、<4>主要部品(エンジン・ミッション・排気系部品類等)を回収する「解体工程」、<5>非鉄部品を回収する「非鉄回収工程」、<6>残った廃車ガラをサイコロ型にプレスする「プレス工程」です。図で流れを見るとわかりやすいでしょう。自動車が組み立てられていくプロセスを、ちょうど逆に見ればよいのです。
 この分解ラインの確立に伴い、時間効率も大幅にアップしました。吉川工業時代の1日23台だった解体数も45台に伸びています。
徹底した解体を行った結果、ドア、エンジン、コンプレッサー、ドライブシャフト、ショックアブソーバーなど回収された部品は、補修・美化されて部品市場に提供されます。こうした「リサイクルパーツ」は、多様な車種のあらゆる部品に及び、価格も新品の半値以下なので人気を集めています。
 また、金属の再利用としては、鉄は近くの八幡製鐵所の転炉に入れられ、再び高級な鉄製品に生まれ変わります。回収された鉄に付着しているプラスチックも、転炉の中では加熱原料となり、金属溶解の効率を高める働きをします。
 鉄やアルミなどでできているエンジンは溶解炉に入れ、融点の違いを利用してアルミと鉄に分別回収しています。これらは、自動車工場などに金属原料として納品されており、文字通り、自動車から自動車が生まれていくのです。
 一方、回収した部品のうち塩化ビニールやガラスについては、どのように処理すべきかまだ課題が残っており、研究が進められています。

■自動車リサイクル法■
 2005年1月に、「使用済み自動車の再資源化等に関する法律」(通称:「自動車リサイクル法」)が施行されます。この法律により、消費者は新車購入時に、廃車時の処理費用として一定料金を前納することが義務付けられることとなりました(既保有者は法施行後の第1回車検時に納入)。このシステム作りは現在、国レベルで検討されています。使用済み自動車をいかに環境にやさしく処理するかは非常に重要な問題です。これは「自動車リサイクル法」により解決されていくと思います。西日本オートリサイクルはこの分野を切り開いていくパイオニアとして、さらに高度な処理法の研究を進めていく考えです。
西日本オートリサイクルへの質問と回答
社会広聴会員:
シュレッダーダストは今後どう処分するのでしょうか?
西日本オートリサイクル:
自動車自体の軽量化に伴い、シュレッダーダストの大部分を占めるプラスチックなど樹脂の使用量はさらに増えるものと思われます。これを処理できる施設を現在、全国に10カ所程度建設中ですが、今後はこれをさらに増やす方向で検討しなければならないでしょう。
 
社会広聴会員:
リサイクルを念頭に、車の製造過程でも改善を進めなければならないのではないですか?
西日本オートリサイクル:
ドイツなどではリサイクル法で、原材料の集約化が進んでいます。メーカーも解体しやすさを考えながら、製造を進めるようになっています。冷却液の回収などは欧州車の方が簡単です。日本のメーカーから多くの見学者が当社に見えますが、こうした点を見習って製造するようにしてほしいものです。
 
社会広聴会員:
リサイクル部品の流通について、解説してください。
西日本オートリサイクル:
日本では年間500万台が廃車となります。使用年数は平均10年です。車検時、傷が少々あっただけで車検が通らず、廃車にしてしまうことがあります。しかし、中古部品をもっと活用すれば、買い替えコストも削減できます。自動車部品の中古パーツをネットで販売している会社は、全国に12社ほどあります。リサイクルパーツとして、取り扱う部品の50%は外装パーツです。日本の中古部品マーケットはまだ5%程度で、欧米の30~40%(3000億~4000 億円/年)に比べると、まだまだ未成熟です。これから成長の余地があるでしょう。
 
社会広聴会員:
自動車リサイクル法は、西日本オートリサイクルにとってどんな影響がありますか?
西日本オートリサイクル:
営業上は追い風となります。例えば、フロンやエアバッグの処理については、処理費が預託金から出ます。また、シュレッダーダストを出さない企業には、相応の処理費が出ます。当社は現在1日8時間で1000台の処理が可能ですが、これを3交代制とすることで、3000台まで拡大することができると考えています。
 
出席者の感想から
●廃車から状態の良いエンジンなどは、取り外されているのだろうとは思っていたが、実に95%に近いリサイクル率を目指しているとはびっくりしました。環境のためにも、ぜひがんばっていただきたいと思います。このようなリサイクルが採算面でも大きく飛躍し、安定した会社になれるよう、我々消費者も応援したいと思います。

●社長自らの詳しいご説明に、リサイクルへの取り組みに対する熱意が感じられました。メーカー・車種の違う車の部品を、手作業によって取り外していく様子は、まさに職人技でした。中古部品の販売をしているが、新品同様、クレームはないという話を友人たちに話しましたが、認知度ゼロでした。これからも友人に教えていきたいと思います。

●自動車業界の方々の見学が多いとのことでしたが、一般市民や子どもたちにも多く見学してもらい、私たちの生活と地球環境問題は切っても切り離せない問題であるということを、認識してもらう必要があると思います。

●「自動車リサイクル法」ができなくても、製造する企業や販売する企業が、自らリサイクルに努力する姿勢があってもよいのではないかと思った。

●北九州市のエコタウンを初めて見学したが、地方自治体の取り組みに感心するとともに、西日本オートリサイクルのような企業が生まれた環境が理解できた。自動車リサイクル法の施行を目前にして、今回の企画はタイミングが良く、内容もすばらしいものだった。
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