企業と生活者懇談会
2004年2月20日 静岡
出席企業:東レ
見学施設:三島工場

「生活に身近な企業を考える」

 1926年(大正15年)誕生した東洋レーヨン株式会社は、順調に業績を拡大し、1970年(昭和45年)に社名を「東レ株式会社」に変更しました。東レは、今や衣料からIT素材まで、現代生活の必需品を提供する生活に最も身近な企業のひとつとして、親しまれています。
 2月20日、「生活に身近な企業を考える」をテーマに、静岡県三島市の東レで「企業と生活者懇談会」を開催しました。ここには主力工場のひとつである三 島工場と、東レ総合研修センターがあり、両施設の見学と懇談を通じ、現代生活と企業との相互関係を改めて考える機会を得ました。社会広聴会員22名が参加 しました。
東レからの説明
■会社の沿革■
 会社創立後、滋賀、瀬田、愛媛と生産工場を順次拡大してきましたが、戦後、化学繊維の先進企業と、積極的な技術提携を行い、新しい飛躍の道を踏み出しました。1951年(昭和26年)米国デュポン社とナイロンに関し、また1957年(昭和32年)英国ICI社と「ポリエステル繊維等に関する技術提携契約」を締結しています。こうして従来から生産していたナイロン糸に加え、成形用ナイロン樹脂、ポリエステル繊維(「テトロン」)、 ポリエステルフィルムなどの製造販売が始まりました。また、生産拠点も、1951年(昭和26年)には名古屋工場が、1958年(昭和33年)には三島工場が、1960年(昭和35年)には、岡崎工場が完成しています。
 1960年代に入るとアクリル繊維、1970年代には人口皮革や炭素繊維など数多くの新製品が世に出ることとなりました。中でも70年代後半から透析用人工腎臓や抗血栓性材料、インターフェロンなどの医薬品を開発、販売し始め、世間の注目を集めました。またこの年代には関東にも生産拠点を拡張し、千葉工場、土浦工場などが相次いで完成しています。さらに、東海工場や岐阜工場も完成しています。そして、80年代後半になると、その後広く親しまれることとなった家庭用浄水器「トレビーノ」の販売を開始しました。
 こうした、日本国内での生産拠点・営業品目の拡充とともに、世界各国にもネットワークの充実を図ってきた結果、現在では、日本を含む18の国と地域に204社(国内114社、海外90社)のグループ会社を展開するに至っています。

■企業理念は社会への貢献■
 東レでは「わたしたちは、新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」というモットーを企業理念として掲げています。この企業理念のもと、経営の基本方針として、顧客のために新しい価値と高い品質の製品とサービスを提供することを心がけ、社員のために働きがいと公正な機会を提供し、株主のために誠実で信頼にこたえる経営を行い、地域社会のために社会の一員としての責任をもち相互に良好な関係を築けるよう努力することを指針としています。

■三島工場■
 新幹線の三島駅から徒歩で約10分、富士山を望む風光明媚な地に、三島工場は立地しています。この工場は日本初のポリエステル系合成繊維の生産工場として、1958年(昭和33年)に操業を開始しました。
 この地は、交通が至便で、富士山系の良質な工業用水が豊富で、工場立地条件に大変恵まれています。ここは東レの主力工場のひとつとして、10万5千坪の敷地に1800名の従業員が働いています。
 この環境の下でポリエステル繊維「テトロン」の長繊維、樹脂、ポリエステルフィルム「ルミラー」など、高度な技術を生かした製品を生産しています。繊維は、絹調の合成繊維など高付加価値の製品を主体に生産しています。また機能性と物理的強度化学的特性を持つ「テトロン」は衣料から産業資材、建築内装分野にまで幅広く活用されています。
 フィルム系への応用では、IT社会に不可欠の高機能磁気記録媒体用のベースフィルムなどが作られています。
 日本初の医薬品として承認されたインターフェロン・ベータ製剤「フエロン」や末梢循環改善薬「ドルナー」など、医薬品の生産も行っています。こうした医薬品は癌、肝炎、高血圧などの現代病への対処として広く使用されています。

■総合研修センター■
 工場に隣接する総合研修センターは、その施設の充実度で日本の企業の中でも有名です。他企業の担当者の見学も絶えません。主として会議などに使われる10階建てのセンター棟をはじめ、研修棟、ダイニング棟、室内プール付きの宿泊棟など、施設が充実しています。また、600名弱を収容できる大講堂もあり、ここは、東レ本体での使用が無い時は、研究学会などの外部利用にも供されています。
 研修棟1階にある「企業文化フロア」には、数多くの東レ素材が、商品とともに展示されており、日常生活の様々な場面で浸透している東レ製品が一目瞭然となっています。
東レへの質問と回答
社会広聴会員:
人材育成と社内教育についての考えをご説明ください。またこの研修所の利用実態についても教えてください。
東レ:
東レでは、「人材の確保と育成は、東レの最重要課題」という認識を持っています。この認識の下、相当額の投資も行っています。東レの場合、2002年度の従業員一人当たりの教育費は、日本の企業の平均(3万4000円:産業労働研資料に基づく)に比べ約3倍です。
この研修所では、新入社員が年1回、管理職はポストに応じ、研修を受けており、年間利用者は約2万人です。
 
社会広聴会員:
社内の人材配置、人員配置はどのように計画されていますか?
東レ:
人事調査と人事アセスメント(面接)を実施することで、次の5年間の配置を考慮しています。営業向きか管理向きか、見極めます。管理職になるまで、3回のアセスメントがあります。
 
社会広聴会員:
環境へどのような対応をされていますか?
東レ:
社内では、安全・防災・衛生・倫理と並び環境を会社の5大目標のひとつとしています。東レグループとして「環境報告書」も出し、社内には「地球環境委員会」も設けるなど、重視しています。
この工場について言えば、現在敷地の17%が緑化されていますが、20%を目標に緑化を進めています。工場では薬品も作っており、防虫への配慮も同時に重要です。
また、ここは富士山の地下水脈に連なり、市内を流れる柿田川へ約110万トン/日、流入があります。東レは県へ費用を支払い、10万トン/日を利用しています。温度調節などに利用した後、余った水を三島市内の源平川へ還元しています(夏3万6千トン/日、冬1万7千トン/日)。
また、事業のひとつとして、歩道に雨水のしみこみやすい素材の研究開発を行っています。
 
社会広聴会員:
医薬品の開発の現状についてご説明ください。
東レ:
医薬品の開発や生産が軌道に乗るまでは、大変なコストと時間を要します。「苦節10年」ということも、大げさではありません。先に紹介したように、最終的に商品までこぎつけたものもありますが、大変困難な事業です。長期的な視野に立ち、基礎研究を進めています。
 
社会広聴会員:
これからの会社の事業展開についてどのような目標を持っていますか?
東レ:
各部門ごとに明確な目標・指標を持ち事業の充実を図って行きたいと思います。例えば、糸1トン当たりの必要人員何名、というような分かりやすい指標のもとで、品質向上を図りつつ、コスト、エネルギー、原料の削減を達成していきます。
会社全体としては、現在の560億円の営業利益を、来年には700億円、そして将来は1000億円を目標にしています。
 
出席者の感想から
●東レの歴史と製品の展示コーナーでは、化成品分野の商品エリアの広さ、個人消費向けはもちろんのこと、生活に密着している産業製品への展開ぶりを、深く感じました。

●極めて内容の濃い研修会でした。参加希望理由にあげた「企業理念」と「人材育成」に関し、明快な回答を頂き、ありがとうございました。

●企業理念にうたっている「新しい価値の創造」を具体化する形での工場管理と「人材育成」機関としての総合研修センターの役割を実地に見学する事ができ、嬉しく思います。

● 水の浄化についてもう少し詳しく知りたかったです。化学物質の除去の仕方や、浄化施設の大きさ(面積・体積)、フィルターは、御社の製品なのか、という点などです。工場で汲み上げた水は、使用後きれいにして源平川へ流しているという話をもう少しつっこんで聞きたかったです。

●敏感な肌の人が増えてきているので、そういった人のための化学繊維の開発を東レさんの研究テーマとしてもいいのではないでしょうか。

●教育には、投資を惜しまないという姿勢には感服いたしました。2002年度の教育費が一般企業の3倍弱ということに驚かされました。リーダーになるまでは、1年に1回は研修があるという充実したプログラムにも感心しました。

●最も感動したのは、オイルショック時、首切りをせず、工場内に殖産会社を興し、身内を守ったことで、当時の経営者の高い見識に感服いたしました。

●中高生クラスの子供たちにもっと工場見学を開放されてはいかがでしょうか。それが永い目で見れば日本のモノづくり、理系志向を育てていくことになるのではないでしょうか。

●生産現場は写真で見るのとはと違って、熱気、湿気、音など多くのご苦労を感じることができ、参考になりました。

● 東レは非常に幅広い事業領域を持っていますが、その実態は高分子化学の世界から派生するものに絞っているとのことです。以前に多くの企業が「業容拡大」と言って、闇雲に多角化して失敗事例を積み上げてきた歴史を見てきた者にとって、とても新鮮でかつ企業の堅実さ、誠実さを感じ、同じ日本人として誇らしい気持ちになりました(日本企業が何かと自信を無くしている昨今ですから)。
お問合せ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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