企業と生活者懇談会
2012年3月13日 東京
出席企業:日本損害保険協会
見学施設:日本損害保険協会本部

「暮らしの中の危険と損害保険」

3月13日、東京都千代田区の日本損害保険協会本部で、「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者22名が参加しました。同協会の概要、損害保険の基礎知識の説明を受けた後、そんぽADRセンター、そんぽ情報スクエアを見学。その後、東日本大震災における損保業界の取り組みについて説明を受け、質疑懇談を行いました。
日本損害保険協会からは、栗山泰史常務理事、西村敏彦総合企画部広報室長、山本真史総合企画部次長が出席しました。
日本損害保険協会からの説明
■日本損害保険協会の概要■ 
 日本損害保険協会(損保協会)は、損害保険会社25社(2012年2月末)が会員として構成する事業者団体です。損害保険は事故が起きたときの経済的な損害を補償する仕組みですが、事故が多発して想定以上の保険金をお支払いすると損保会社自体の存立を危うくします。損害保険業の健全な発展には、事故の少ない安全で安心な社会が大前提です。損保協会は、自転車事故防止の啓発、飲酒運転防止マニュアルの策定といった交通安全対策や、子どもたちを核に地域の防災意識を高める「ぼうさい探検隊」など、社会の安全・安心に貢献する活動を進めています。 
 また損保業界にとり、事故が起きたときに、適切に保険金をお支払いする実績や能力を維持することや契約の分かりにくい点を十分に説明することによって、お客さまとの信頼関係を築いていくことが大切です。損保協会では、講師派遣活動や消費者団体との懇談会を通じて損害保険への理解を高める取り組みを進めています。契約者の相談に応え、契約者と損保会社との間のトラブルを中立・公正な立場から解決に導く体制(ADR機能)も整備しています。 
 
■損害保険の基本■ 
 火災や自動車事故などの万一の損失に、どのように備えておくべきでしょうか。一つは貯蓄ですが、十分な金額を蓄えるまでの間に事故に遭う恐れがあります。もう一つは保険です。貯蓄と異なり、契約期間中いつ事故が起きても、あらかじめ定められた補償(保険金)を受け取ることができます。ただし幸いにも事故に遭わなかった場合は、支払った保険料は掛け捨てとなります。しかし「損をした」のではなく、「安心を買ったのだ」と考えていただきたいと思います。 
 保険は「大数の法則」に基づいています。一見偶然と思われる事象も、たくさんのデータを集め観察すると一定の法則や発生確率が見えてきます。サイコロを6回だけ振ったとき、一から六までの目が均等に1回ずつ出る可能性は低いでしょう。しかし、何万回も振れば、それぞれの目が出る確率は6分の1に近づいていきます。つまり、たくさんの事故歴を観察すると事故の発生確率が分かり、お客さまからいただくべき保険料を算出することができるようになります。 
 保険を支えるもう一つの原理は、「一人は万人のために、万人は一人のために」。少額の保険料をみんなで出し合って一カ所に貯めておき、不幸にして事故に遭った人に積み立てたお金から給付する相互扶助の発想です。 
 
■地震保険について■ 
 東日本大震災が「千年に一度の大地震」といわれるように、地震災害は発生予測頻度が難しく大数の法則が十分に機能しません。加えてたった一度の災害の被害額・保険金支払額が莫大な規模となるため、民間の損保会社が単独で引き受けることができません。このため地震保険は、「地震保険に関する法律」に基づき、政府と損保会社が共同で運営しています。1966年(昭和41年)の創設以来、保険料は別会計で管理され、損保会社の利益として1円も計上することなく、東日本大震災前までに約2兆4000億円が蓄えられ、ここから震災後に約1兆2000億円の保険金が支払われました。 
 仮に今関東に大震災が起きたとすると、地震保険金約6兆2000億円が必要と見込まれています。現在の積み立て額では足りません。この不足分は国の内部で地震特別会計に一般会計から資金を投入してお支払いします。そして次の震災までに貯まった保険料をもって一般会計からの投入分を返済するという、超長期的な視野で運営されています。国の助けはありますが、あくまで地震保険加入者の保険料だけで運用され、加入者だけが万一の保険金を得られる自助の仕組みです。 
 地震保険は、地震・噴火・津波による損害を補償します。対象は住宅と家財です。火災保険とのセットで加入していただきます。ただし火災保険の契約金額の50%を限度に契約していただくため、万一の場合、家を建て直すに足る金額は受け取れません。地震保険金は、被災後の生活が早く安定するための立ち直り資金とご理解ください。 
 生活安定が目的ですので、被災後にいかに早く保険金をお支払いできるかが肝心です。そのため損害調査と支払い保険金額の決定は比較的シンプルです。家財や建物の損害は、調査のうえ全損、半損、一部損の3つの認定基準のいずれかに区分し、全損認定の場合は契約金額の100%、半損は50%、一部損は5%の保険金をお支払いします。 
 
■東日本大震災における損害保険業界の取り組み■ 
 昨年(2011年)3月11日の大震災発生当日、ここ損保協会本部に地震保険中央対策本部を、併せて仙台市にある東北支部に地震保険現地対策本部を設け、業界の総力を挙げ、直ちに取り組みを開始しました。 
 課題の一つは相談対応。膨れ上がる相談ニーズに応えかつ保険金のご請求を促すため、損害保険に関する相談窓口を示すポスター(約8万枚)や地震保険の概要などを記載したチラシ(約55万部)を作り、避難所、行政機関などに掲示・配布しました。代理店と連携し避難所での巡回相談も行いました。お問い合わせで目立ったのは「どの会社と契約しているか分からない」というものです。「津波で保険証券が流失した上、契約手続きをした家人が行方不明」という痛ましい背景があったのではないかと思います。これを受けて3月19日に地震保険契約会社照会制度を開設しました。どの損害保険会社にご連絡いただいても、保険会社側で契約会社を確認するようにしました。 
 もう一つの課題は損害調査対応です。迅速な地震保険金のお支払いを実現するために最も効果が大きかったのは、航空写真・衛星写真による全損認定地域の認定でした。今回はあまりにも被害が広範囲にわたったため、一軒一軒被害物件を調査をしていては保険金を迅速に支払えません。そこで約2万3千枚の航空写真を参考に、津波による全損認定地域を決めて、その範囲内のすべての家を全損と認定しました。一部損についてはお客さまの自己申告による書面調査に基づいてお支払いする対応も取りました。こうした工夫により昨年5月ゴールデンウィーク明けから支払いが一気に進み、翌月の6月21日までに1兆6億円をお支払いいたしました。本年(2012年)3月1日時点で地震保険の保険金お支払い総額は1兆2167億円、調査完了率99.1%と、ほぼ支払いを終えています。 
 被災の実状に応じた損害認定基準の明確化も行いました。例えば、元来「床上浸水は、乾けば元通りになるので一部損」としていましたが、現地の調査員からは「半損と認定しないと、損保会社として責任を果たすことにならない」との声が上がりました。今回の浸水は石油混じりの海水でしたので「乾けば済む」というものではなかったのです。
見学の様子
 「そんぽADRセンター」は、損保会社との間の紛争解決の支援などを行う相談窓口です。見学時も、ヘッドセットを付けた職員が電話で相談対応をしていました。 
 損保会館1階の「そんぽ情報スクエア」は、一般の人も気軽に立ち寄れる空間です。損保会社各社の商品パンフレットを一度に入手し比べることができて便利です。
日本損害保険協会への質問と回答
社会広聴会員:
損保業界の概況を教えてください。
日本損害保険協会: 
会員25社がお客さまからいただいた元受正味保険料は合計約7兆7000億円(2010年度)です。主力の自動車保険の低迷を受け、全体に縮小傾向です。1990年代後半から規制緩和が進み、各社自由に商品や保険料を設計できるようになりました。低迷する市場と激化する競争のもとで生き残りを図るため、損保会社の合併・統合も進んでいます。
 
社会広聴会員:
交通事故の被害者となったときに、加害者が加入していた自動車保険による補償(賠償)を受けました。しかし、加害者本人からはおわびのひとつもありませんでした。保険は便利な仕組みですが、倫理面への配慮も望みます。 
日本損害保険協会: 
初めてこの世に賠償責任保険という保険が生まれたときに論争が起きました。「不注意をした人間自身が賠償負担の痛みを感じるべきだ。責任を保険で補えるのなら、みんなが注意を払わなくなる」という反対意見が上がったのです。 
確かに事故の防止は大切ですが、文明国である以上は交通事故による被害者は漏れなく救われなくてはなりません。その場合、理屈だけで言えば、事故被害者の治療費はすべて保険でまかなうという国民皆保険制度の導入も一つの方法です。しかし、あくまで運転者の責任を追求し賠償させ、金銭負担だけは保険でカバーという仕組みこそが、被害者を救いつつ事故を少しでも減らすことにもつながる最も合理的な方法だと思います。賠償責任保険は、本来、被害者を救うことを目的とする保険です。「保険で賠償金を払いさえすればいいのだ」という姿勢の契約者には私たちも憤りを感じます。
 
社会広聴会員:
地震保険の今後の課題は。
日本損害保険協会:
東日本大震災後、損害調査の方法や認定基準について約2割のお客さまからご不満の声が上がりました。こうした声を正面から受け止め、課題を37にまとめ改善に向け検討を始めています。 
また、地震保険の世帯加入率が23.7%(2010年度末)というのは、損保業界の努力不足です。一人でも多くの方が加入され、万一の際に一人でも多くの方が保険金を受け取り、将来に向けて一歩を踏み出すために役立てていただきたい。自助・共助・公助が組み合わされなくては、被災者の救済は十分なものになりません。今回の大震災を受け、義援金などと比べてより迅速な支払いが可能な自助としての地震保険をさらに普及させていかなければならないと、改めて強く感じています。 
参加者の感想から
●損保業界が被災した契約者の立場に立って迅速に査定し支払いをするという意思を徹底し、その組織的な動きが力を発揮したことが、よく理解できました。

●損害保険については「掛け捨てとなる保険料がもったいない」との思いが強かったのですが、助け合いの仕組みであると、認識を新たにしました。

●損害保険の本質がよく分かりました。保険会社および社員に高い倫理観が求められていることも知りました。

●損害保険を見直すよい機会になりました。東日本大震災に対する現場での真摯な取り組みやご苦労を知ることもできました。
日本損害保険協会ご担当者より
 損害保険は目に見えない商品ともいわれ、懇談会では、手に取っていただいたり、体験していただくようなツールがなく、参加者の皆さまにご満足いただけるかどうか不安でした。しかし、損害保険は万一のための経済的備えとして身近なものです。東日本大震災を契機に地震保険に対する関心の高まりもあって、参加者の皆さまからたくさんのご意見やご質問をいただき、私どもも多くの学びと気付きを得ることができました。
お問合せ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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