企業と生活者懇談会
2013年6月21日 神奈川
出席企業:昭和電工
見学施設:川崎事業所

「化学の力でプラスチックをリサイクル」

6月21日、昭和電工川崎事業所(神奈川県川崎市)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員17名が参加しました。同社概要について説明を受け、破砕成形設備やガス化設備などを見学。その後、質疑懇談を行いました。
昭和電工から、CSR部の萩宏行担当部長、川崎事業所プラスチックケミカルリサイクル推進室の今泉洋室長、川崎事業所環境安全部の平林和幸課長、総務・人事部広報室の草彅美行室長、川崎事業所総務部総務グループの荒川博文グループリーダー、総務・人事部広報室の桜井明子アシスタント・マネージャー、総務・人事部広報室の矢崎朋子アシスタント・マネージャー、川崎事業所プラスチックケミカルリサイクル推進室の廣橋順子氏が出席しました。
昭和電工からの説明
■昭和電工の沿革■
 創業者の森矗昶(もりのぶてる)は、1926年(大正15年)に、ヨードの製造・販売を手掛ける日本沃度を設立し、社長に就任しました。これが昭和電工の創業に当たります。その後、1928年(昭和3年)に昭和肥料を設立し、同社の川崎工場(現昭和電工川崎事業所)にてわが国初となるアンモニアと硫安(肥料)の製造に成功します。当時、川崎工場は、国内最大の硫安工場でした。1934年(昭和9年)には、日本沃度を日本電気工業に改称。1939年(昭和14年)の日本電気工業と昭和肥料の合併を経て、昭和電工が設立されました。昭和電工という社名は、この両社の社名を組み合わせたものです。 
 
■容器包装のリサイクル■ 
 日本人は、1日に1人当たり約1キログラムのごみを排出しています。年間にすると、約4500万トン、東京ドームに換算すると125杯分ものごみを排出している計算になり、処分場不足の問題を引き起こしています。家庭から出るごみの約60%が容器包装です。 
 使用済みの容器包装を、再利用できる資源に変えることで、新しい循環型リサイクル社会の構築を目指すため、1997年(平成9年)に「容器包装リサイクル法」が制定されました。同法の下では、消費者、自治体、事業者の3者がそれぞれ役割を分担して、プラスチックをはじめとするすべての使用済みの容器包装を分別、回収、再商品化することが義務付けられています。 
 使用済みプラスチックの容器包装で、プラマーク※1が付いているものを「容器包装プラスチック」と呼び、「容器包装リサイクル法」の対象となります。主にマテリアルリサイクル※2、ケミカルリサイクル※3といった手法でリサイクルされています。また、ケミカルリサイクルには、4つの手法が含まれています。1つ目は、「油化」。石油からつくられたプラスチックをもう一度(石)油に戻して再利用する手法です。2つ目は、「高炉原料化」。製鉄所で鉄をつくる過程で使われます。3つ目は、「コークス炉化学原料化」。これも製鉄所で鉄をつくる過程で使われます。4つ目は、「ガス化」。分子のレベルまで分解し、他の物質(化合物)として利用するもので、昭和電工で採用している手法です。 

※1 プラスチック製容器包装識別表示マーク。 
※2 使用済みプラスチックをそのままプラスチックとして、熱を加えて溶かし、他の製品に再生する手法。 
※3 化学分解後に組成変換して再利用する手法。


■ごみから宝をつくる夢の技術■
 ペットボトル以外のプラスチックは、種類が多く材質も異なるため、分別や異物除去の徹底が必須となり、一括再生処理が難しいのが現状です。そこで新しい発想のリサイクル方法が求められ、研究開発が進められてきました。それが、ガス化による使用済みプラスチックのケミカルリサイクルです。もともとプラスチックは、石油を原料とする製品です。ガス化技術を用いることで、例えば合成繊維や化学肥料など、石油を精製したナフサから製造されている化学製品の原料と全く同じものを石油由来のプラスチックから出来るようになります。「ガス化ケミカルリサイクル」とは、ごみから宝を作る夢の技術であり、この技術が普及すれば、ごみ処分場の不足や、石油資源の枯渇など、現代社会が抱えている資源・環境問題などを解決する画期的な効果が期待できます。 
 
■昭和電工ガス化プロセス■
 熱分解により使用済み容器包装プラスチックをガス化し、アンモニア合成ガスを製造しているガス化ケミカルリサイクル設備が、ここ川崎事業所で稼働している「昭和電工ガス化プロセス」です。同プロセスは、プラスチックの種類を問わず、ほとんどすべてをリサイクルの原料にできる「ゼロエミッション※4型プラスチック・ケミカルリサイクル」です。 
 家庭で分別された使用済み容器包装プラスチックは、「容器包装リサイクル法」の下、各自治体の基準に従って回収されます。回収されたプラスチックは、圧縮・梱包し容積を減らされた後、川崎事業所に運ばれます。運ばれた回収プラスチックは、破砕機で細かく切り刻まれ、磁力選別機で余分な金属が取り除かれます。その後、成形機でかりん糖のような形の「減容成形品(以下、RPF)」に加工されます。RPFは、専用車両でガス化設備に運搬され、まず、低温ガス化炉に投入されます。炉内では、600~800℃に熱せられた砂が循環しており、プラスチックは、その砂に触れることで、一酸化炭素、水素、炭化水素、タールなどに熱分解されます。低温ガス化炉で発生した熱分解ガスは、次に高温ガス化炉に送られます。1300℃以上の炉内では、上から下へらせん状にガスが下降していき、その過程で、炉内に供給された少量の酸素やスチームと反応し、水素、一酸化炭素を主体とする合成ガスに改質されます。合成ガスは急冷され、ガス洗浄設備で塩化水素が除去されます。合成ガスは、ガス化設備に併設されたCO転化設備、脱硫設備を経て、アンモニア製造設備に送られ、最終的にアンモニアとなります。 
 アンモニアは、その幅広い用途によって、私たちの生活になくてはならない存在です。例えば、合成繊維、化学肥料、医薬品など、身近な消費財の原料になります。また、フロンに代わる冷凍機の冷媒や工場の排煙に含まれる窒素酸化物を除去する還元剤になるなど、環境保全にも大きく貢献しています。昭和電工のプラスチック・ケミカルリサイクルは、社会的に非常に意義深い事業として、大変注目されています。さらに、昭和電工は、資源循環型社会の実現に貢献するため使用済みプラスチックだけでなく、アルミ缶リサイクルにも積極的に取り組んでいます。

※4 生産・廃棄・消費に伴って発生する廃棄物などをゼロにすることを目指す考え方・運動。
見学の様子
■巨大なガス化設備■ 
 会社および川崎事業所の概要説明を受けた後、川崎事業所のプラスチック・ケミカルリサイクル見学ルームで、プラスチック・ケミカルリサイクルの概要について説明を受け、破砕成形設備をガラス越しに見学しました。安全上の理由などから、破砕成形設備に立ち入ることはできませんでしたが、破砕機で細かく切り刻まれ、磁力選別機で余分な金属が取り除かれた使用済みの容器包装プラスチックや、RPFなどを手に取って見ることができました。また、アンモニアが、虫刺されの薬「キンカン」と同じニオイであることも学びました。その後、専用バスで事業所内にあるガス化設備やアンモニア製造設備などを見学しました。
昭和電工への質問と回答
社会広聴会員:
分別されるプラスチックごみの回収は増えていますか。 
安川電機: 
容器包装リサイクル法の対象となって分別されているプラスチックごみは、約67万トンあります。自治体によってごみの収集方法が異なり、まだ容器包装リサイクルに取り組んでいない自治体もあることから、今後70万トン近くまで増加するのではと考えています。 
 

社会広聴会員:
再生プラスチックは、どのように使われていますか。 
昭和電工:
プラスチックをもう一度プラスチックに再生する手法は、マテリアルリサイクルといいます。荷物の運搬に使うパレットや衣類のハンガー、公園のベンチ、工事現場のコーンなど、様々なものに再生されます。 
  

社会広聴会員:
環境対策について聞かせてください。 
昭和電工:
ガス化炉で生成された合成ガスは、すべてアンモニアの原料に使用します。また、アンモニア製造時に発生する二酸化炭素はドライアイスにしますので、ガス系に関しては、事業所外に排出されることはありません。ガスを冷却する際に使用する水は、スラグ(糟)を取り除き、中和してから水処理施設で調整して、海に排出しています。排出する際は、水質を測定し、川崎市とともに常に監視しています。また、合成ガス生成過程で回収されるスラグ、金属類、塩、硫黄は、すべて「資源」として有効活用されます。 
 
社会広聴会員:
世界のプラスチックリサイクルの現況について教えてください。 
昭和電工:
国によって収集体制や法律が異なるので一概には言えませんが、各種の統計を見てみると、この5年から10年でリサイクルが大きく進展しているようです。なお、日本のように再生利用しやすい形で分別排出している国は非常にまれです。
 
社会広聴会員:
回収された使用済みプラスチックにはどのようなものがありますか。 
昭和電工:
回収された使用済みプラスチックの半分以上は、ポリエチレン(ラップやレジ袋など)とポリプロピレン(容器包装など)です。
 
社会広聴会員:
昭和電工に運ばれる一般廃棄物は、主にどの自治体からのものですか。 
昭和電工:
主に近隣の自治体からのものです。特に横浜市からは年間に排出される約5万トンの廃棄物のうち、約3万トンを昭和電工でリサイクルしています。東京や千葉からも運ばれてきます。なお、川崎市については、現在、一部の地域で実施しており、今年の9月から川崎市全体で実施する予定です。
 
社会広聴会員:
リサイクルで生活者に望むことはありますか。
昭和電工:
使用済みの容器包装のリサイクルで一番困るのは、中身が残ったままで回収されてくる場合です。特にマテリアルリサイクルの場合は、少しでも汚れているとリサイクルできないことがあります。皆さまには、ぜひとも、ひと手間かけてのごみの分別をよろしくお願いします。
 
社会広聴会員:
見学会を実施する背景を教えてください。 
昭和電工:
昭和電工が製造しているアンモニアが、セーターの原料になると聞かされても、消費者の皆さまには理解しにくいと思います。また、アンモニアは、工場の排煙に含まれる有害な窒素酸化物を除去する還元剤となるなど、社会にとって重要な役割を担っています。このことを、見学会などを通じて、少しでも消費者の皆さまにご理解いただきたいと考えています。 
 
社会広聴会員:
学校での出前授業はどのぐらい実施していますか。 
昭和電工:
 2011年(平成23年)には、14件実施しました。出前授業は、化学物質の知識、化学のおもしろさ、環境とのかかわりなど、「化学」への理解を深めていただくことを目的に実施しています。 
 
参加者の感想から
●プラスチックからはプラスチック製品しか再生できないと思っていましたが、色々なものに利用できるアンモニアがつくられていたことは全く初耳でした。 
 
●私たちの生活はプラスチック製品に囲まれています。当たり前のように使い捨てせず、再利用することへの重要さを深く心に留めました。今までとは違った視点でプラスチックを見ることができると思います。 
 
●プラスチックリサイクルの画期的な処理方法を見学し、今までの概念が根本から変わりました。今後、より多くの地域に普及することを願います。 
 
●プラスチックの再生方法も多様で再生された製品も生活に必要なものとなることがよく分かりました。使用済みプラスチックの分別の大切さを知り、日常生活で心掛けたいと思いました。 
 
●子ども・学生向けの学習会はぜひ続けてもらいたいです。私のような中高年でも学生時代の化学の教科書を引っぱり出して読んでみたいと思うのですから、子どもたちにとっておもしろくないわけがありません。化学に興味を持ち、そこから地球環境、資源エネルギーなど様々な問題を学ぶきっかけになると思います。 
昭和電工ご担当者より
当社は家庭で捨てられるプラスチックごみを、化学品の貴重な原料として活用しています。またリサイクルされた化学品は繊維など様々な製品に姿を変えて、人々の暮らしに役立っています。人口が多く、使用済みプラスチックも多く集荷される首都圏に事業所を持つ化学企業として、化学の力で人々の暮らしに貢献することを目標に、当社は今後もリサイクル社会の構築に貢献してまいります。
お問合せ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
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