企業と生活者懇談会
2015年4月23日 千葉
出席企業:電力中央研究所
見学施設:我孫子地区

「安定した電力供給に向けて~自然災害・環境問題への取り組み」

4月23日、一般財団法人電力中央研究所我孫子地区(千葉県我孫子市)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員17名が参加しました。研究所の概要、我孫子地区にある地球工学研究所および環境科学研究所の概要について説明を受けた後、研究所内にある7つの実験設備を見学し、その後、質疑懇談を行いました。 
電力中央研究所からは、我孫子運営センターの高野俊一所長、稲田恵美子主任、地球工学研究所の山本広祐副所長、環境科学研究所の菊池弘太郎副所長、広報グループの佐藤清マネージャー、細野稚葉主任が出席しました。

電力中央研究所からの説明

■電力中央研究所の概要■
 電力中央研究所は、1951年(昭和26年)、北海道電力から九州電力までの9電力体制ができた年に、財団法人電力技術研究所として松永安左ヱ門により設立されました。当時は戦後復興の最中で、各電力会社に共通する課題も多く、各社が個別に研究するよりも、共通の研究機関を設立した方が人的、資金的に効率的という背景がありました。
 当研究所は、電気事業の運営に必要な電力技術および経済に関する研究を行い、電気事業一般業務の能率化に寄与することを事業目的としています。現在は、4つの大きな地区(大手町地区、狛江地区、我孫子地区、横須賀地区)に8つの研究所(社会経済研究所、システム技術研究所、原子力技術研究所、地球工学研究所、環境科学研究所、電力技術研究所、エネルギー技術研究所、材料科学研究所)があり、職員は約800名で、うち約600名が研究者です。
 昨今の電気事業を取り巻く課題の多くは1つの分野にとどまらず、複数の分野にまたがっています。当研究所は、電気や土木、原子力といった分野から環境科学、生物、社会・経済などの分野まで幅広い研究活動を行っているため、こうした複雑な課題に対し総合的に取り組むことができます。また、電力技術に関する研究だけでなく、電気料金制度や地域経済など、エネルギー・環境に関わる政策や制度設計についての研究にも取り組んでいます。

■我孫子地区の概要■
 我孫子地区は、地球工学研究所と環境科学研究所、我孫子地区を所管する我孫子運営センターから成ります。敷地は約17万平方メートル、職員は約200名です。自然、環境科学研究の拠点として、安全重視社会、自然共生社会、循環型社会、低炭素社会の実現を目指しています。毎年10月には一般公開し、昨年(2014年)は約1500名の方が来所しました。
 地球工学研究所では、自然を対象とした研究を大きな柱とし、地質・地盤・地下水・地震・材料・構造・流体・気象など、様々な分野の専門家が、電力施設をはじめとする社会基盤の立地・建設、災害軽減・メンテナンスなどの研究に取り組んでいます。
 環境科学研究所では、大気・河川・海洋・土壌・生態系・バイオテクノロジー・環境化学などの幅広い専門家が集結し、電気事業の直面する、地域から地球規模に至る幅広い環境問題の解決と、環境と共生する堅固で柔軟なエネルギー需給構造の再構築を目指して、最先端の研究と技術開発に取り組んでいます。

見学の様子

■地球工学研究所■
 地球工学研究所では、「津波・氾濫流水路」「ヘリカルX線CTスキャナー」「空気力載荷装置」「人工バリア性能評価装置」の4つの設備を見学しました。 
 「津波・氾濫流水路」は、津波に対する防潮堤や電力設備の頑強性を評価する設備です。この設備は2014年(平成26年)4月に運用を開始したばかりの最新設備で、世界に1つしかありません。電力中央研究所が開発したもので、長さ20メートル、幅4メートル、高さ2.5メートルの水路に、陸上に氾濫した津波を実現象に近いスケ-ルで忠実に再現することができます。当日は、水路内に鉄筋コンクリートの防潮堤を設置して津波をぶつける実験映像を視聴しました。秒速5メートルの津波や漂流物が勢いよく防潮堤にぶつかる様子に、ビデオ映像からもその規模の大きさと迫力が伝わってきました。 
 「ヘリカルX線CTスキャナー」は地震による断層の発達過程を3次元的に把握するための装置です。CTスキャナー内に断層模型実験装置を設置し、実験装置が人工的に断層のずれを作り出す様子を撮影することで、断層が黒い線として写り、地中でどのように広がっていくのかを確認することができます。活断層がある地域では、この実験データと現地調査を踏まえて、電力施設をどの程度離して建てるべきかを検討するなど、安全な発電所の設計に役立てています。当日は、断層模型実験装置が人工的に断層のずれを作り出す様子や、CTスキャナーで撮影した地中の断層の発達過程の映像を見学しました。断層がずれることで地表が雑巾を絞ったように変形していく様子や、地中の断層が様々な方向に広がっていくスライドを、参加者は熱心に見学していました。
 「空気力載荷装置」は、送電設備への風雪の影響を調べる装置です。送電線の模型に大型のファンで起こした風を当てることで、送電線の振動がどのような条件で起こるのか、どうすれば送電線のショートにつながるような振動を防げるのか、また、全国にある送電線をどこから優先的に対策していくのかなどを研究しています。当日は、実際に風速10メートルの風を起こし、雪が付いた送電線の模型を揺らす実験を見学しました。風を受けて大きく揺れていた模型が、風を受ける角度を少し変えただけで揺れが止まる様子に、参加者からは驚きの声が上がりました。
 「人工バリア性能評価装置」では、ベントナイトという天然の粘土の性能実験を見学しました。ベントナイトは、放射性廃棄物を処分する際、その周囲を覆う人工バリアの材料として検討されている物質ですが、猫砂や洗顔料などの日用品にも使われている身近な物質です。放射性廃棄物は、地中深くに埋設処分することが検討されており、地下水にさらされないよう、あるいは地下水にさらされたとしても水の動きが遅く、核種が動きにくくなるよう、水に対するバリア性が高い材料で覆う必要があります。ベントナイトの特性は、その遮水性です。当日は、中央に仕切りを入れたアクリル容器を2つ用意し、一方には水と砂、もう一方には水とベントナイトを入れました。中央の仕切りを外すと、砂の方はすぐに浸水し、砂は崩れてしまいましたが、ベントナイトの方は、吸水しベントナイト自身が膨らむことで水の浸入を防ぎ、崩れることはありませんでした。ここでは、ベントナイトの遮水性をさらに強固にするための研究や、ほかにも人工バリアの材料として検討されている物質の研究などを行っています。

■環境科学研究所■
 環境科学研究所では、「乱流輸送モデリング風洞」「カワヒバリガイ飼育設備」「電磁界ばく露装置」の3つの設備を見学しました。
 「乱流輸送モデリング風洞」は、発電所を建設する前の環境アセスメントや安全審査のため、周辺環境への排ガスの拡散状況を調査する設備です。全長17メートル、幅3メートル、高さ1.7メートルの風洞内に、周囲の山や海といった地形を含めた発電所のジオラマを設置します。そこにその地域に多い風の流れを精密に再現することで、排ガスに見立てた物質がどのように拡散するかを調べます。風洞内の風向きは一定ですが、ジオラマを設置した台座が360度回転することで、風向きが変わった場合にも対応することができます。大規模な発電所の場合は、ジオラマが台座に乗らないため、あらかじめ風向きに応じたジオラマを何種類も作って実験しています。
 「カワヒバリガイ飼育設備」は、水力発電所の発電障害の原因となるカワヒバリガイの飼育設備です。カワヒバリガイは3センチ程度の小さな貝ですが、水路などにまとまって付着し配管などを詰まらせることから、生息、繁殖可能条件や生存可能な水温域などを調査し、その駆除方法、付着防止策の検討に役立てています。カワヒバリガイは特定外来生物のため、隔離された部屋で、全ての実験水が回収・処理されるような環境で飼育されています。参加者は、厳重に管理されたカワヒバリガイを興味深く見学していました。
 「電磁界ばく露装置」は、IH調理器のような家庭用電化製品が発生する電磁界が生物にどのような影響を与えるのかを調べる装置です。国際的な基準の7倍以上の強い電磁界を細胞や動物に当て、健康への影響を調査しています。これまで、妊娠や胎児への影響を調査してきましたが、実験条件下では磁界を当てた場合と当てない場合に差はなく、学術誌にも結果を公表しています。現在は、電磁界による発がんへの影響について調査しています。

電力中央研究所への質問と回答

社会広聴会員:
電力中央研究所の研究成果はどのように社会に役立てられていますか。
電力中央研究所:
当研究所では、年間400~500件の研究報告書を発表しています。研究報告書を各電力会社へ提供することによって、各社の課題解決に役立てていただいています。また、研究者は国内外250近くの学会、協会の活動に参画し、安全や環境に関わる規制や基準を定める活動にも携わっています。
 

社会広聴会員:
研究報告書を私たちが見ることはできますか。
電力中央研究所:
当研究所では過去30年分、約8800件の研究報告書をホームページに公開しており、どなたでも閲覧いただけます。また、研究報告書以外にも、研究成果を写真や図を交えて分かりやすく説明したリーフレット「電中研ニュース」や「電中研トピックス」など多くの刊行物を作成し、同様にホームページに公開しています。
 

社会広聴会員:
各電力会社が独自に行う研究との役割分担は。
電力中央研究所:
地方の各電力会社では、各地の特性に合わせた地域密着型の研究を行っています。一方で、当研究所では電気事業全体の効率的な資源配分を考え、基礎研究や先進的な研究を中心とした研究を行っています。
 

社会広聴会員:
日本では、再生可能エネルギーの中で地熱発電の割合が非常に低いそうですが、その理由は。
電力中央研究所:
 地熱発電は地球工学研究所で以前から研究しています。地熱によって発生した天然の水蒸気を用いる通常の地熱発電に加え、地中にある高温の岩盤内に人工的に割れ目を作り、水を注入して蒸気を取り出す高温岩体発電にも力を入れていました。しかし、地熱発電はアセスメントに非常に長い時間がかかることや、地下深くまで穴を掘るので安定的に稼動するためには相当のコストが掛かるといった課題があります。また、地熱発電に適した場所の多くは国立公園などの国が指定する自然公園内にあるので、発電所の建設に制限があります。この制限については政策面で前向きに検討していますが、以上のような理由から、全国に普及するに至っていません。
 

社会広聴会員:
電力小売りの完全自由化や、発送電分離に向けた動向について教えてください。
電力中央研究所:
来年(2016年)4月から電力小売完全自由化が始まり、お住まいの地域外の電力会社や新規参入の電力事業者から電気を購入できるようになります。電力は車や家電製品と異なり均一的な商品ですので、様々なサービスと提携して付加価値を付けたりするなど、各電力会社の取り組みが新聞などでも取り上げられています。消費者の皆さまの立場からすると、選択の余地が広がることになりますので、付加価値やコストを考慮して、ご自身に合った会社を選ぶ必要があります。
一方で、電力業界は、サービスだけでなく、安定供給やコスト面も意識して取り組まなければなりません。先行している欧米では、発送電分離を導入した国で電気料金が上がっている事例もあります。日本でも定期的に制度を点検し、消費者の皆さまが、できるだけ多くのメリットを享受できる制度とすることが大切です。
 

社会広聴会員:
東日本大震災時に首都圏で計画停電が必要になった理由を教えてください。
電力中央研究所:
首都圏では、東日本大震災直後に稼動可能な発電設備のうち約4割が使えなくなることで、電力が不足し405万軒が停電になりました。原子力発電所以外にも、福島県、茨城県、東京都にある火力発電所や、水力発電所、変電所が使えなくなってしまいました。それにより、市場が必要としている電力量を用意することができず、より大きな停電を回避するため、計画停電により電力使用量をコントロールしました。また、ほかの電力会社からの電力融通も周波数の関係で十分確保できなかったことも一因です。

参加者の感想から

●電力事業の背景に、多岐にわたる分野で高度な研究を担う機関があることを初めて知りました。大掛かりな実験装置の見学は貴重な体験でした。 

●「津波・氾濫流水路」など、通常は立ち入れない区域で仔細な内容まで懇切・丁寧な説明を聞くことができ、大変有意義な機会でした。 

●電気事業関係の研究施設としては幅広い分野で基礎と先端研究をしており、その視野の広さと問題把握のスケールの大きさ、研究者の熱意が感じられました。 

●研究成果について一般公開が進んでいて、民間での活用もできるとのことで、素晴らしいことだと感じました。 

●科学的な真実を解明して中立な立場で真実を社会に提供していく努力を今まで通り継続してください。

電力中央研究所 ご担当者より

 今回の研究設備見学や懇談会を通して、エネルギーや環境問題をより身近に感じていただき、何か1つでも心に残るものがあれば大変うれしく思います。また、参加者の皆さまからの忌憚のないご意見やご感想を伺える貴重な機会に感謝いたしております。
 電力中央研究所では、これからも電気を安定して届けるため日々研究に取り組み、その成果を積極的に発信してまいります。
 このたびはご参加いただきありがとうございました。

お問合せ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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