企業と生活者懇談会
2006年1月31日 愛知
出席企業:豊田自動織機
見学施設:高浜工場

「生活の基盤を支える企業を考える」 

1月31日、愛知県高浜市にある豊田自動織機高浜工場で「企業と生活者懇談会」を実施しました。生活者23名が参加し、フォークリフトの製造ラインを見学した後、質疑懇談を行いました。
豊田自動織機からは、トヨタL&Fカンパニー生産管理部の永井嗣実部長、製造部の古田英志部長、製造部生産調査室の東山秀雄グループリーダー、製品企画部 の西尾寿洋部長、人事・総務部の水野陽二郎部長、ビジネスサポート・センター安全衛生環境部の村尾孝之部長、コーポレート・センター広報部の石崎裕二部 長、田中久司グループリーダー、東京支社の余語幸夫支社長、総務グループの長谷川美樹氏が出席しました。
豊田自動織機からの説明
■豊田自動織機の歩み■
 豊田自動織機は、日本の産業発展を築いたひとりといわれる豊田佐吉が発明した「自動織機」を製造するために1926年(大正15年)に設立されました。
 トヨタ自動車をはじめとする多くのトヨタグループ企業が、同社から誕生しています。現在は、創業以来手掛けている繊維機械だけでなく、フォークリフト、カーエアコン用コンプレッサー、自動車、エンジンなどの事業をグローバルに展開しています。中でも、エアジェット織機、フォークリフト、カーエアコン用コンプレッサーは、販売シェアが世界1位です。
 さらに、パワーエレクトロニクス製品、LCD(液晶ディスプレイ)などの電子機器部品や、物流ソリューションビジネスにも注力しています。

■高浜工場■
 高浜工場は、フォークリフトなど産業車両を生産する専門工場で、1970年(昭和45年)に竣工しました。製造と販売が一体になったトヨタL&F(ロジスティクス&フォークリフト)カンパニーに所属し、自動倉庫どの物流機器・システム事業も展開しています。
豊田自動織機への質問と回答
社会広聴会員:
社名にある繊維機械事業の現状を教えてください。
豊田自動織機:
繊維機械事業の売上高は年間約400億円で、1兆2000億円の連結売上高の約3.5%です。
以前この事業の展開についてどうするか議論した時期もありましたが、世界に人々がいる限り衣服の需要があるわけで、この事業は当社にとっての家業であり、たとえ最後の1社になっても、この繊維機械事業は続けるという強い意志を持っています。従って今後も続けていく考えです。
 
社会広聴会員:
御社のトヨタグループにおける位置付けについて教えてください。
豊田自動織機:
豊田自動織機はトヨタグループの源流の会社です。豊田佐吉が自動織機を開発し、その技術をイギリスのプラット社に売却したお金で自動車の開発をし、それが今日のトヨタになったといわれています。今では、トヨタグループはトヨタ自動車を中心にデンソーやアイシン精機など、自動車関連事業を行う13社で構成される企業集団となっています。当社も一部車両組立やエンジン事業などを行っています。歴史的には源流でありますが、トヨタを支える中核企業という位置付けは変わりません。
 
社会広聴会員:
創始者のものづくりへの思いを従業員にどのように伝えていますか。
豊田自動織機:
トヨタグループは、豊田佐吉が亡くなって5年後の1935年(昭和10年)に、豊田佐吉の考えをまとめた「豊田綱領」を作りました。それは「上下一致、至誠業務に服し産業報国の実を挙ぐべし(国が栄えるようにちゃんと働きなさい)」「研究と創造に心を致し常に時流に先んずべし(常に研究と開発を行い世の中に貢献していくように)」というものです。これは、トヨタグループ各社が様々なところで理念のように使う最も有名な言葉のひとつです。さらに「華美を戒め質実剛健たるべし」「温情友愛の精神を発揮し家庭的美風を作興すべし」「神仏を尊崇し報恩感謝の生活を為すべし」の つの言葉から成っています。
トヨタグループはこの考えを基本的に引き継いでいます。当社も経営理念で「公明正大」「社会貢献」「環境保全、品質第一」「顧客優先、技術革新」「全員参加」を掲げていますが、主な考えは豊田佐吉の「豊田綱領」を引き継いでいます。会社のトップは、新入社員に豊田自動織機の社名の由来を説明し、豊田佐吉のことも話し伝えています。
会社の名前「豊田」は、創業者名なので冠として必要です。もともと繊維機械があっての今日なので「織機」も外せません。また「自動」は、単に自動で織る機械という意味ではなく、万が一不良品が発生した際には、自動的に止まるからという説明をしています。業態と合っていない豊田自動織機という社名をずっと掲げていますが、なぜ豊田自動織機なのかは、豊田佐吉からのトヨタの歴史を話さないと、新入社員には分かってもらえません。こういうことを折に触れ、トップ自ら従業員に説明しています。
 
社会広聴会員:
仕入れ先に対する指導方法あるいは考え方をお聞かせください。
豊田自動織機:
高浜工場では、仕入れ先が数百社ありますが、そのうち重点的な仕入れ先には当社のノウハウ、例えばTPS(トヨタ生産方式)を伝えたり、経営スタッフの派遣など、様々な取り組みを行っています。また年3回ぐらい「カイゼン事例」と称してテーマを設定し、そこで「ムリ・ムダ・ムラ」の「カイゼン」を自ら行っていただいています。また、各社に対する直接指導の際は、先に種明かしをせずに、基本的には自ら汗水垂らして悩んでいただき、解決策を考えてもらっています。これはトヨタの「なぜ、なぜ、なぜを5 回やる」という方式に沿っているわけです。これにより自らいいものを確実に造っていただいています。
 
社会広聴会員:
環境対策について教えてください。
豊田自動織機:
環境への責任は「グローバル環境宣言」を基本に据え行動しています。その成果ですが、まず、工場からの二酸化炭素の排出量を2005年度末までに、1990年と比べて5%削減するように取り組んできましたが、ほぼ達成のめどが立っています。
また、産業廃棄物の埋め立てをゼロにする活動は、早い時点で目標が達成できました。その付随効果として、焼却灰の埋め立ても5年間でゼロにすることができました。また、焼却灰をセメント骨材に利用するなど工夫し、直接埋め立てのみならず、間接埋め立てもゼロにすることができました。
化学物質の使用量は、1998年当時と比べると、総量で半分以下にすることができました。塗装方法を変更し、トルエンやキシレンなど溶剤の使用を止め、水に溶けた塗料を使うなどしたためです。
次に、今年4月からの向こう5年間で取り組むべき第4次プランとしては、引き続き地球温暖化防止、資源生産性の向上、化学物質などの環境リスクへの対応を考えています。この活動は国内のみならず、欧州、北米、中南米、アジアに展開する豊田自動織機グループ全体で取り組んでいきます。
 
参加者の感想から
●さすが「トヨタ」の理念を守り続けられている企業で大変感動しました。工場内で先生役の人と新人のコミュニケーションのやりとりを見て、ジーンと胸が熱くなり、日本のものづくりは生きていると実感しました。企業は、「人育て」をしなければ良い製品開発はあり得ません。多様化していく社会の中で「トヨタの理念」が全国に広がればと思いました。

●事前に『社会・環境報告書2005』をいただけたため、懇談会の前にゆっくりと目を通したくさんの情報を得ることができましたし、それをもとにしての懇談会はとても有意義なものとなりました。
フォークリフトの製造工程を実際に見せていただきましたが、機械でなく手作業で地道に行わなければならない場面も身近に見ることができ「ものづくりの原点」の素晴らしさに出会え、大変印象に残りました。

●世界シェアナンバーワンの実績を誇るフォークリフトの工場を見学し、日ごろは産業機器にはほとんど縁のない私でしたが、得ることが多々ありました。
まず、経営に対する5つの基本理念をもとに、ハード面だけでなくソフト面に至るまで日々努力されている熱意に感心しました。また、ものづくりとしての厳しい訓練(取り組み)を通して技術の向上に努められている様子を知ることができました。

●トヨタの本家らしく社員の方の説明も丁寧で分かりやすく、工場も整理整頓が行き届いた環境の中で、将来を見据えて社員の技能伝承の教育も行われていたのには感心しました。また「カンバン方式」「カイゼン」も、グループ企業だけでなく他社にも依頼があれば勧められていると聞き、日本の企業のためにもずいぶん活躍されていることを心強く感じました。

●堅実なイメージがある会社でしたが、M&Aについての質問に「しっかりと実績を上げて本業を頑張ることで企業価値を高めます」というご回答があり、本当に堅実な姿勢の会社だと思いました。
「溶接道場」という技術向上のためのコーナーがあり、若者が一心不乱に金型を削り、火花を散らして全身で取り組んでいる姿に出会い、感動しました。

●出席いただいた関係者の方々の率直な対応に接し、隠し事のない、言い繕いをしない経営が行われていると推察いたしました。日常生活とは直接には縁のない分野の製造業ですが、世界を相手にすべてを国内生産で行っているところに心強さを感じました。

●工場といい、環境に取り組む姿勢・コンプライアンスといい、すべてに優秀な企業だと認識を新たにいたしました。また、事前に提出した質問にも真摯にご回答いただき、感銘を受けました。豊田自動織機のお客さまを大切にする心が実感できました。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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