■JR北海道グループの概要■
2007年(平成19年)4月1日でJR北海道は満20年を迎えました。JR北海道グループは「旅とくらしのサポート事業グループ」として、お客さまの視点を常に大事にしながら、安心してご利用いただけるサービスの提供と、お客さまの満足を目指し、現在31社で構成されています。
JR北海道本体は、2007年4月現在、8000人弱の社員で全道2500キロの鉄道路線を営業しています。1日の列車本数は約1300本、年間約1億3000万人のお客さまにご利用をいただいています。
鉄道事業において安全の確保は、最優先に取り組むべき重点事項です。「基本動作、基本作業の徹底」「情報連絡の徹底」「感受性を高めた作業」を安全確保のための3本柱とし、事故防止に取り組んでいます。設備面でも様々な対策を進め、例えば冬期の安定輸送確保対策としてポイント融雪ピットを設け、ポイントに雪が挟まって切り替わらなくなることを防いでいます。札幌から帯広方面に向かう途中にある狩勝峠(かりかちとうげ)付近は大変風が強いため、防風柵を設けて列車の安定的な運行確保に努めています。
北海道内の都市間輸送では、特急列車が最高速度130キロで走る高速化に取り組んできました。高速化は地上設備の改良などに多大な費用を要しますので、釧路方面や名寄方面の高速化では、国や北海道、沿線自治体のご協力をいただいています。
札幌都市圏輸送ですが、JR北海道が発足した20年前は、札幌駅を中心に半径約20キロが通勤圏でした。その後、宅地開発が進んで沿線人口が増え、約 40キロまで広がりました。こうしたことから、これまでに177両の新型車両を導入して混雑緩和を図り、利便性の向上に努めました。
地域社会への貢献の観点から、文化活動やスポーツ活動などにも取り組んでいます。例えば本社ロビーで「桑園(そうえん)・JRふれあいコンサート」を月に1回ほど開催し、様々な音楽を無料でお楽しみいただいています。次に、JR北海道の経営状況についてご説明します。お客さまのご利用状況を、輸送密度(営業キロ1キロ当たり、1日にどれぐらい乗車しているか)で見ると、全体の2500キロのうち、約30%の800キロが500人未満です。DMVの開発はこうした状況を背景としています。
JR北海道の1年間の輸送人員は、約1億3000万人です。このうち、特急など優等列車をご利用になるお客さまは約1割であるのに対し、通勤、通学の定期券でご利用になっているお客さまが55%を占めています。一方、年間約730億円の鉄道運輸収入のうち、優等列車からの収入が65%と大きなウエートを占めているわけですが、高速道路の延伸や他交通機関との競争激化などから、優等列車のご利用は減少傾向が続いているのが現状です。
2007年度の収支計画では、営業収益891億円に対して営業費用は1158億円で、この差の267億円が営業損失です。この赤字を、JR北海道が発足したときに設けられた経営安定基金6822億円を運用して得られる運用益265億円などで埋め、経常利益3億円を見込んでいます。
今後の主な取り組みをご紹介します。まず、2007年10月1日にダイヤ改正を行い、札幌から帯広、釧路方面、旭川方面、室蘭方面の利便性を向上させます。札幌・旭川のL特急は「スーパーカムイ」と名称を改め、新製車両を投入して早朝深夜を除き所要時間を1時間20分に統一します。次に、札幌駅西口に宿泊特化型ホテル「JRイン札幌」を建設します。2008年夏にオープンできる見込みです。また、札幌圏でICカード乗車券の導入を進めます。JR「北」海道のIC「カ」ードということで「Kitaca(キタカ)」という名前で2008年の秋から登場する予定です。
この6月に5カ年のグループ中期経営計画「スクラムチャレンジ2011」を策定しました。計画期間の最終年度となる2011年度には、2006年度(平成18年度)比で60億円の増収、約100億円の収益改善を図ることを目標としています。
■北海道新幹線■
北海道新幹線は新青森から札幌までの区間をいいますが、新函館までの着工しか認可されていません。北海道新幹線のメリットは、北海道を訪れるお客さまが格段に増えることであり、北海道に根ざしている当社としては、大きなビジネスチャンスととらえ、新幹線建設に協力しています。新幹線は鉄道のみならず、観光、食、文化など幅広い分野で大きな効果が得られると考えられます。そのような効果が期待されるため、北海道知事が中心となって、当社も北海道の一企業としてオール北海道で、新函館までではなく、札幌までの延伸を要望しています。
新幹線といえば、速い列車ということですが、基本的に新幹線の定義は、時速200キロ以上のスピードで走る列車をいいます。レールの間隔が、北海道内にある在来線の線路よりも広く、曲線が非常に緩やかであるため、高速で走ることができます。また、非常に居住性が良い乗り物です。席数については、現在「はやて」という東京・八戸間を走っている新幹線が、814席です。一方、羽田・千歳間を飛んでいるボーイング747は569席です。新幹線は、広く、ゆったりした空間で大量に運ぶことができる乗り物といえます。また、悪天候にも強く、定時性に優れています。
現在、札幌・東京を列車で行くと、9時間半ぐらいかかりますが、新幹線が300キロで走行した場合には、所要時間が約4時間20分になるといわれています。
■DMV■
DMVの試験車は、マイクロバスを改造したものです。モードチェンジは、モード・インターチェンジに進入することにより、ガイドウェイで強制的に車両のセンターと軌道のセンターを合わせるシステムになっていて、前後に付いている鉄車輪を油圧で降ろすことで、線路上に鉄道車輪が降り、線路上走行が可能になります。モード・インターチェンジに進入後、わずか10~15秒でモードチェンジが可能です。ただし、駆動はバスと同じように、後ろのゴムタイヤの内側が線路上に乗って、駆動することになります。線路も道路も走ることで、地域に役立つ乗り物といえます。シームレス、鉄道から道路に渡るのも乗り換えなしで済むことも勘案しながら、地域の活性化にも一層貢献できるような乗り物にして開発を進めたいと考えています。
今回のDMVの開発を本格的に始めたのが2002年(平成14年)10月で、約5年前からということになります。苗穂工場の中にプロジェクトを立ち上げ、開発に着手しました。中古のマイクロバスを買って改造し、最初の試験車が完成しました。それ以降、走行試験の結果を踏まえて、2005年(平成17 年)1月以降は、釧網線(せんもうせん)で試験的営業運行に使用しているプロトタイプの製作にかかっています。同年9月、連結可能なプロトタイプ車として開発に成功しました。2006年8月9日からは、国土交通省などの協力のもと、2007年4月14日からの試験的営業運行など、いろいろな検討を行っています。DMVの特性、活用については、2004年(平成16年)1月に、試験車を開発して公表して以来、非常に反響が大きく、今までに苗穂工場で4000人を超える方が試乗しています。今、試験的運行で一般のお客さまも多いですが、地域活性化に悩まれている自治体の方が視察で来られることもかなり多いです。その方々からいろいろいただいているご意見も含めまとめると、DMVは大きく3つの特性・特長に分けられると思います。1つ目は、ストックの有効活用で、2本のレールがあれば走行できることです。さらに、新たなシステムを組み合わせることで、インフラの軽減もできると期待されます。2つ目が利便性とサービスの向上です。線路も道路も乗り換えなしに走行できることで、鉄道の利点である定時性、バスの利点である柔軟性、機動性を持ち、これを有効活用することで、様々な交通ネットワークが構築できると考えられています。3つ目は、新たな需要の創出として、空港のアクセスができないだろうか、鉄道延伸ルートの代替にできるのではないかです。DMVには、いろいろな期待を持たれていることになります。