企業と生活者懇談会
2014年2月28日 東京
出席企業:日本取引所グループ
見学施設:東京証券取引所

「証券取引所ビジネスの最前線」

2月28日、日本取引所グループ 東京証券取引所(東京都中央区)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員28名が参加しました。同社の概要について説明を受けた後、株式模擬売買を体験、東証アローズや証券史料ホールなどを見学。その後、質疑懇談を行いました。
日本取引所グループからは、宮原幸一郎常務執行役、広報・IR部の多賀谷彰部長、菊地晶子課長、大門豪調査役、飯田一弘調査役、荒田伊都氏が出席しました。

日本取引所グループからの説明

■日本取引所グループの誕生■
 昨年2013年(平成25年)1月1日、東京証券取引所グループ(以下、東証)と大阪証券取引所(大証)が経営統合し、持株会社「日本取引所グループ」が誕生しました。長年、ある意味ライバルとして競い合ってきた東証と大証が経営統合することになった大きな目的は、それぞれに上場していた商品を1つのプラットフォームに集約することによって、投資家の利便性向上につなげること、上場会社や証券会社のコスト削減につなげること、といった点にあります。 
 日本取引所グループ全体で、金融商品市場の開設・運営に係る事業を行っています。具体的には、傘下の会社において、東証は株式などのいわゆる現物商品の市場運営、大証はデリバティブ商品の市場運営、上場を希望する会社の審査・上場会社の管理などの自主規制業務は東京証券取引所自主規制法人(2014年4月に日本取引所自主規制法人に名称変更)、清算業務は日本証券クリアリング機構がそれぞれ担っています。昨年7月に現物商品を東証に集約した後、今年2014年(平成26年)3月24日にはデリバティブ取引を大証に集約し、統合作業は一区切りを迎えます。 

■日本取引所グループの重点戦略 ■
 日本取引所グループは「アジアで最も選ばれる取引所」を目指しています。現在、アジアの国々は経済成長を続けており、例えば香港やシンガポールなどは金融市場としても確立されてきています。このような状況の中で、大きく分けて3つの重点戦略に取り組んでいます。 
 1つ目は新しい日本株市場の創造、2つ目はデリバティブ市場の拡大、3つ目は取引ビジネス領域の拡大です。
 新しい日本株市場の創造のため、日本株の魅力向上を目指した様々な取り組みを行っています。その1つが、新しい株価指数の開発です。今年1月から「JPX日経インデックス400」という新たな指数の算出を始めました。資本の効率的な活用や、投資家を意識した経営観点などの要件を満たした魅力的な銘柄で構成されています。この指数をベンチマークとすべく様々な普及活動を行っています。また、特に海外投資家から日本はコーポレート・ガバナンスが弱いのではと指摘を受けていることを踏まえ、上場会社に対して、社外取締役導入の促進活動を行っています。
 デリバティブ市場の拡大では、超長期国債先物(20年国債を対象)の取引を今年4月に再開し、海外指数デリバティブを導入することなどを通じて、商品ラインナップの拡充を図っていきます。 
 取引所ビジネス領域の拡大としては、清算ビジネスの拡大や、新たな商品プラットフォームの整備等を進めています。例えば、民間の資金をインフラ整備に活用できるよう、上場インフラ市場の実現を計画しています。 

■個人投資家層の裾野拡大に向けた取り組み■
 多様な投資家が参加する厚みのあるマーケットを形成するためには、個人投資家層の裾野拡大が極めて重要です。日本の個人金融資産約1600兆円のうち、証券投資は15%程度にすぎません。これは、米国(約53%)、欧州(約30%)に比べて低く、まだまだ日本では伸びる余地があると考えています。 
 このため、2012年度(平成24年度)から、我々が行っている日本経済応援プロジェクト「+YOU」の一環として、「投資の意義」や「証券市場と経済のつながり」等を投資未経験者の方にも分かりやすく伝えるプロモーション活動を実施しています。長期投資をテーマにした経済講演会「ニッポン応援全国キャラバン」を全国各地で開催したり、テーマ銘柄として、女性の活躍に力を入れている「なでしこ銘柄」や、特許価値をテーマとした銘柄を選出するなど、分かりやすく魅力ある銘柄を紹介したりしています。

見学の様子

■株式模擬売買の体験■
 マーケットエクスペリエンスコーナーでは、株式模擬売買を体験しました。架空の株式市場で、架空の銘柄(3銘柄)を対象に、当初の資産1千万円をできるだけ増やしていくゲームです。一通り説明を受けた後、参加者1人ずつがパソコンに向かい、売買を体験しました。経済指標などのニュース、個別の会社情報が時折入り、株価変動の要因となります。160万円以上の利益を上げた参加者が1位となりました。参加者からは、「面白くなり、あっという間に時間が過ぎた」「思っていたよりも難しかった」といった声が上がりました。  

■東証アローズ ■
  直径17メートルの巨大なガラスシリンダーがそびえ立つ施設、東証アローズを見学しました。1999年(平成11年)4月まで株券売買立会場として、多いときは2000名以上の証券会社の社員が手のサインや専用電話回線を通じて活気ある取引を行っている場所でした。2000年(平成12年)5月に現在の新しい立会場に生まれ変わり、取引はすべてコンピューターで行われています。東証の取引参加者資格を有する証券会社(約100社)が、専用回線を通じて取引所に注文を出します。シリンダーの中では東証の社員が、リアルタイムで売買を監視しています。ガラスシリンダー上部で回っているのは、チッカーというものです。取引が成立するたびに、銘柄名、現在の株価などが表示されます。回る速度は8段階あり、取引が活発になると速くなります。 
 ガラスシリンダーに隣接して、メディアセンターという2階建てのブースがあります。国内のキー局や日米合弁の情報配信会社である日経CNBCなどのサテライトスタジオがあり、、日本全国や世界に向けて、東京の株式市況が発信されています。 
 また、上場会社の社長をはじめ役員一同が鐘を鳴らす上場セレモニーが行われており、その様子を見学することができました。五穀豊穣の縁起をかついで、5回鐘を鳴らすと決まっています。この鐘は昭和初期までは取引の開始と終わりを告げるためのものでしたが、現在はセレモニーで鳴らされています。昨年の大納会では、安倍首相とパラリンピック陸上の佐藤真海選手がこの鐘を鳴らしました。  

■証券史料ホール■
 証券史料ホールでは、株式取引が電子化される以前に発行された数々の株券や、明治・大正・昭和の順に並んだ、証券取引に関する古い品々の展示を見学しました。 
 日本初の発行となった「第一国立銀行」(現:みずほフィナンンシャルグループ)の株券もあり、証券にまつわる歴史の一片を知ることができました。 

日本取引所グループへの質問と回答

社会広聴会員:
取引所はどのような仕事をして、私たちの生活にどう役立っているのでしょうか。
日本取引所グループ: 
取引所は社会的には3つの役割があります。1つ目は株式やデリバティブ市場のマーケットを開き、いつでも投資家に売買をしてもらい、資産運用ニーズに応えることです。2つ目は、株式市場があることで、会社にとっては会社の成長のための資金が必要になったときに資金を調達できること。国民経済的には、皆さんのお金が株式市場を通じて企業に流れ、それを会社の成長のために使っていく、そのためのお金を集める役割が取引所の一番大きな役割だと思います。3つ目は、社会全体に価値尺度(経済の体温計)を提供することです。
 

社会広聴会員:
どのような基準で市場の区分があるのでしょうか。
日本取引所グループ:
市場には、東証一部・二部、マザーズ、JASDAQがあります。まず、東証一部と二部についてですが、端的には会社の大きさや株式の流通量が違います。時価総額、株主の数、上場株式数などの基準が一部の方が多く、必然的に大きな会社が多いということになります。マザーズは、1990年代に、東証が、一部・二部市場とは別に、ベンチャー企業向けに新しくつくりました。利益を出す、情報開示をしっかり行うという上場会社としての基本的なところは確認した上で、会社の規模・株主数などについてはもう少し下げた基準を設け、若いベンチャー企業が機動的に株式市場を通じた資金調達ができるようにしたのです
JASDAQは、昔は店頭登録と呼ばれていました。まだ上場はできないが、将来有望な会社であることから、証券会社の店頭で注文をお預かりして売買し、実質的に店頭登録市場が形成されてきました。それを1990年代に取引所市場として構成し、JASDAQ市場ができたのです。その後、JASDAQ取引所が大証に買収され、最終的に日本取引所グループとなり、現在は東証で市場の一区分となっています。

社会広聴会員:
取引所自体が東証に上場していますが、株式市場を運営しながら、どのように公正性を保っているのでしょうか。
日本取引所グループ:
市場自体は、金融商品取引法に基づいて運営をしています。また同法に基づいて上場審査や上場会社の管理をしています。取引所自身の上場に関しても通常の上場審査基準に基づいて審査し、さらに金融庁の審査を経て上場しています。その後も、金融商品取引法および東証の上場規則に従う形でファイヤーウォールを敷いています。上場審査や上場管理は、別組織の自主規制法人で行い、自らに対して甘いということがないよう、しっかりとやっています。
 

社会広聴会員:
国際競争力を高めることと、経営統合の関係は。
日本取引所グループ:
我々のライバルはやはり海外のマーケットです。その中で、東京と大阪の2つの市場を1つにし、投資家の皆さんがアクセスしやすくし、システムの利便性を向上することで、世界中のマネーをできるだけ日本に集めることに経営統合の意味があります。そして、その成果がだんだん現れつつあります。例えば、東証より大証での売買高が多かった銘柄では、統合により売買高が2倍程度になったものもあります。東証市場のみに目を向けていた海外投資家が、大証で売買をされていた銘柄にも目を向けるようになったためです。
 

社会広聴会員:
システムの処理速度が速くなってきているのは、なぜですか。
日本取引所グループ:
現在の処理速度は1000分の1秒になっています。これは瞬きをするよりも速い時間です。1990年代のパソコンの普及に伴い、東証は立会場を廃止し、証券会社のシステムもすべてコンピューター化されるようになりました。すると、機関投資家を中心に、取引所からの売買情報をもとに、売買の判断をコンピューターが行い、自動的に発注する形態が増加しました。現在、注文量は1990年代に比べて100倍近くになっています。このため、取引所の処理速度が大変重要になりました。コンピューターの性能は上がっており、今後も注文量はますます増えることが予想されます。我々の使命は安定した市場の提供です。トラブルのないよう、注文をしっかり処理できるシステムをつくることが大切です。
 

社会広聴会員:
システムのセキュリティー対策は。
日本取引所グループ:
社会インフラとしての責務を果たすため、災害など様々なリスクが顕在化した場合も、可能な限り取引機会を提供することが必要です。
我々の持っているシステムは震度6強の地震にも耐え得る堅固なつくりになっています。しかし、万が一、テロや火災に遭った場合に備え、しかも同時に大地震が起こったような場合にも、その影響を受けないような距離にセカンダリーのシステムを構築しています。
 

参加者の感想から

●ニュース番組でよく見るシリンダーやチッカーを目の当たりにして、実際の大きさや取引所の方が働いている様子を見ると、まさに未来のオフィスという感じでした。上場の鐘を生で聞けたのは貴重な体験でした。 

●株式模擬売買の体験は、短時間で株のグラフをぱっと見て判断しなければいけないので、大変でしたが良い体験ができました。企業の概要説明を伺い、統合による変化もよく分かりました。 

●静寂の中で、電子の働きで取引が粛々と処理されていくのを見せていただき、強く感動しました。今後もますます取引システムを発展向上させてシステムの信頼性を高め、国際競争力を向上してほしいと思います。

●取引所と個人としての接点はあまり感じていませんでしたが、今回参加をして非常に身近に感じることができました。様々な一般人向けの広報活動もされていることが分かり、今後セミナーやホームページなども活用したいと思います。

●日本取引所グループが日本の経済の中枢の位置付けにあることを実感しました。グローバル化の時代、今後のさらなる発展を期待しています。 

日本取引所グループご担当者より

 社会広聴会員の皆さま、このたびはご来訪ありがとうございました。日本取引所グループの業務や証券投資を少しでも身近に感じていただけたら幸いです。
 日本取引所グループは、これからも公平で信頼性のある証券市場を提供し、経済の発展、豊かな社会の実現のため、全力で取り組んでまいります。 
 今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします。

 

 

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
pagetop