企業と生活者懇談会
2015年5月20日 群馬
出席企業:カーリットホールディングス
見学施設:日本カーリット赤城工場

「豊かな暮らしに貢献するカーリットグループの取り組み」

5月20日、日本カーリットの赤城工場(群馬県渋川市)で「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者7名が参加しました。同グループ概要、赤城工場概要について説明を受けた後、工場見学、製品体験、質疑懇談を行いました。
カーリットグループからは、日本カーリット生産本部の山﨑嘉彦副本部長兼群馬工場長、斉藤尚志赤城工場長兼危険性評価試験所長、営業本部の坪井孝文副本部長兼化薬部長、カーリットホールディングス広報部の渡部雅範部長、澤幸之主任、吉田隼一氏が出席しました。

 

 

 

カーリットホールディングスからの説明

■カーリットグループの概要■
 カーリットグループは、1918年(大正7年)、実業家の浅野総一郎がカーリット爆薬の製造を開始したことから始まります。爆薬というとダイナマイトを想像する人が多いと思いますが、カーリット爆薬はダイナマイトと性能はほとんど同じで、製造方法が違う爆薬です。ダイナマイトは原料に硝酸や硫酸を使いますが、カーリット爆薬は食塩水を電気分解して製造します。第一次大戦中、ダイナマイトの原料の輸入が難しくなったため、当時セメント事業を営んでいた浅野総一郎が爆薬の国内自給を目指し、カーリット爆薬の製造技術をスウェーデンから導入しました。当初「浅野カーリット」として事業を始め、その後、社名を「日本カーリット」に改め、2013年(平成25年)に持株会社制へと移行しました。 
 現在、同グループは土木工事に欠かせない産業用爆薬の開発・製造、発炎筒や工業薬品、電子材料の製造・販売を行う「化学品事業」、ペットボトル飲料の製品加工を行う「ボトリング事業」、工場設備に使用する部品を製造・販売する「産業用部材事業」の3つの領域を柱とし、幅広い分野で事業を展開しています。2018年に創業100年を迎えるにあたり、「信頼と限りなき挑戦」をグループ経営理念に掲げ、次の100年も社会と人々に貢献することを使命として、さらなる発展を目指していきます。

■日本カーリット 赤城工場の概要■
 日本カーリット 赤城工場は、1995年(平成7年)に横浜市保土ヶ谷区にあった工場を移転して設立しました。赤城山の中腹、標高約600メートルの高原に位置しています。敷地面積は約8万坪(約27ヘクタール)、従業員は約90名です。 
 同工場は、主に自動車用発炎筒、道路作業用発炎筒、含水爆薬、アンホ爆薬(硝安油剤爆薬)を製造しています。自動車用発炎筒は車載が義務付けられているので、皆さまがお使いの車にも必ずあると思います。道路作業用発炎筒は主に高速道路で事故や故障が起こったときに、管轄する高速道路会社や警察が使用する、いわばプロ仕様のものです。 
 社名でもあるカーリット爆薬は、今は製造していません。カーリット爆薬やダイナマイトは、近くに火気があると爆発する可能性のある、非常に危険な爆薬です。一方、含水爆薬やアンホ爆薬は、火気が近くにあっても条件を満たさないと爆発しません。これらの新しい爆薬は昭和40年代に登場し、以降、工事現場での爆発事故がぐんと減りました。現在工事現場で使われる爆薬の9割以上がこれらです。 

■安全への取り組み■
 同工場は火薬を扱う工場ですので、火薬類取締法や消防法の規制を受けます。病院や学校などの保安物件とは、一定以上距離を離して建てなければなりません。 
 工場内は赤城山の斜面を3段に区切り、10メートル程度の高低差をつけた段々畑のようになっていて、上の段から「危険区域」、「非危険区域」、「試験区域」とそれぞれ用途を定めて使用しています。火薬庫や爆薬を製造する建屋は類焼を防ぐため、意図的に小さく造り、それぞれ20メートル以上離して建て、防火壁を設置しています。また、爆発する危険のある建物は周囲を土手で囲い、万一爆発事故が起こったときに周囲への影響を極力抑えるよう工夫しています。最も危険度の高い火薬庫は、「危険区域」の一番奥にあります。同工場は工場の向こうが谷になっているので、これも万一のときにできるだけ被害を広げないようにという工夫です。
 危険物を扱う工場ですので、従業員教育には力を入れています。地元の消防署と合同で行う消防訓練に加え、過去の事故事例などを踏まえた実践的な研修を行っています。火薬工場といっても、扱っているもの全てに爆発の危険があるわけではありません。発炎筒は製造過程で1本1本を紙で包んでいるので、製品の状態になれば一度に大爆発という状況は考えられません。火薬庫など爆発の危険がある建屋では、異常があれば機械を止めてすぐに逃げる、発炎筒であれば1本処理すれば消火できるので落ち着いて初期消火に臨むというように、レベルに合わせたリスク管理を行っています。

見学の様子

■爆薬を見て、触って■
 参加者は、まず自動車用発炎筒の製造現場を見学するため、「非危険区域」にある懇談会場から「危険区域」へ向かいました。広大な敷地内に、小さな建屋が間隔をあけて建っています。工場内には、落雷による事故を防ぐため至る所に避雷針が設置されていました。 
 「危険区域」の入り口には、「火気厳禁」の看板が立てられています。これより先エンジン車は一切入れず、運搬作業などはバッテリー車のみで行います。参加者は、まず火薬の製造現場を見学しました。製造現場は四方を高さ5メートルの土手に囲まれていて、トンネルをくぐって製造現場である建屋まで行きます。トンネルの入り口から建屋は直接見えないようになっていて、これは万一爆発事故が起こったときに、衝撃波が直接周囲に伝わらないようにするための設計上の工夫です。建屋は出入りできる従業員の数や一度に取り扱う火薬類の量などが細かく制限されていて、ここでそれらを混合して火薬を作ります。火薬の混合機は麺類を作る機材と同じ原理、材質でできています。混合機は定期的に分解して洗浄する作業が必要なため、同じく分解、洗浄が必要な食品用の機材と似ているそうです。できた火薬は餅のような質感で、無人のフォークリフトで次の工程を行う建屋まで運ばれます。次の工程では、火薬を発炎筒1本1本に詰める作業を見学しました。 
 続いて、含水爆薬の製造ラインを見学しました。含水爆薬はトンネル工事などに使われる爆薬で、見学したものは1個1キログラムでした。発炎筒の火薬と同様、材料を混ぜて作るのですが、出来たては80度もあり、水を掛けて冷やす必要があります。当日は、製品ができるまでの工程について説明を受け、出来たての爆薬と40分間冷やした爆薬を触り比べました。普段身近にない爆薬について知る機会に、参加者は興味深く説明を聞いていました。 

■シートベルト切断、サイドガラス割りに挑戦■
 「危険区域」から「試験区域」に移動した後は、同社製品を体験しました。同社では、事故などで車中に閉じ込められた際に脱出するための道具として、シートベルトカッターやガラス破壊具(ピック)付きの自動車用発炎筒を取り扱っています。 
 まず、シートベルトをはさみで切ってみましたが、丈夫なシートベルトはなかなか切ることができません。次に、実際にシートベルトがロックされた状況を再現するために、椅子に座ってシートベルトを体に斜めにあてました。シートベルトカッターはとても鋭利な刃が付いているので、誤って手を切ることがないように特殊な形をしています。参加者は使い方の説明を受けながら、カッターをシートベルトに引っ掛け、水平に引きました。はさみでは全く切れなかったシートベルトが簡単に切れる様子に、多くの参加者が驚いていました。 
 続いて、同社のピック付き自動車用発炎筒を使ったサイドガラス割りに挑戦しました。突然の豪雨で車が冠水してしまったというニュースを聞くことがありますが、車のドアが水に漬かってしまうと開かなくなったり、パワーウィンドーが作動しなくなることがあるそうです。サイドガラスを割るこつは、自動車用発炎筒の先に付いたピックを垂直にガラスに当てることです。つい力んで斜めにぶつけるとガラスは割れませんが、落ち着いてピックの先端を垂直に当てると、簡単にガラスは割れました。何度も挑戦して初めて割れる参加者もいれば、一度できれいに割れた参加者もいて、参加者全員で楽しく学べるひとときとなりました。 
 また、発炎筒着火体験も行いました。まず、同社担当者による自動車用発炎筒、道路作業用発炎筒の着火実演がありました。自動車用発炎筒は、キャップに付いている擦り薬でマッチに火をつけるように着火しますが、道路作業用発炎筒はキャップをひねって引き抜くだけで着火します。着火の仕方が違うのは、道路作業用発炎筒は、使用する高速道路会社や警察などからの要望で、高速で走る車から目を離さなくてもつけることができるよう改良したためです。参加者全員で自動車用発炎筒の着火にチャレンジし、こちらは全員簡単につけることができました。

カーリットホールディングスへの質問と回答

社会広聴会員:
発炎筒やシートベルトカッターの使い方はどこで学べますか。車を運転しない人も知っておく必要があると思いますが、使い方を広める活動は行っていますか。
カーリットホールディングス:
使い方についてのDVDを警察と一緒に制作し、普段は運転免許試験場や高速道路のサービスエリアで流すなどの活動を行っています。発炎筒を実際に着火するとなると、炎や煙がでるため環境面で難しいのですが、年に数回、全国交通安全週間に合わせて、全国のサービスエリアで許可を得て着火体験会を開催しています。また今年(2015年)から8月10日を「発炎筒の日」に制定するなどPR活動を行い、今後も啓発活動を続けていきます。
 

社会広聴会員:
自動車用発炎筒の交換はどこで行うのですか。また、今回体験した製品はどこで購入できますか。
カーリットホールディングス:
発炎筒には有効年月が記載されています。当社の製品であれば4年です。一般的には車検の際に有効年月をチェックした上で交換することになります。当社製品については、車検の際にお申し付けいただくか、車用品店でも一部取り扱っています。
 

社会広聴会員:
使わなかった発炎筒はどうなりますか。
カーリットホールディングス:
有効期限が切れた発炎筒は自動車ディーラーなどを通じて回収し、火薬類取締法に準ずる専用回収箱に入れて焼却処分(熱回収)します。当社は産業廃棄物広域認定制度の認定を受けているので、全国から廃棄処分する発炎筒を回収、処分しています。
 

社会広聴会員:
発炎筒は輸出していますか。
カーリットホールディングス:
発炎筒を車載するよう義務化されていて、かつそれがきちんと守られているのは世界中で日本だけだと認識しています。火薬を使った製品は輸出が難しいこともあり、現在は国内だけでの取り扱いとなっています。
 

社会広聴会員:
今後の成長戦略について教えてください。
カーリットホールディングス:
研究開発とM&Aにより、さらなる事業分野の拡大を目指しています。特に研究開発には注力し、ホールディングス(持株会社)化とあわせて、R&Dセンターをホールディングスに設置し、グループ全体の研究開発機能をホールディングスに集約しました。エネルギー、ライフサイエンス、新材料、無機機能の4つの部門で、新しく価値あるものの開発に取り組んでいます。
また、宇宙ロケットを地上から打ち上げる際の燃料の原料に、過塩素酸アンモニウムという化学品があります。この過塩素酸アンモニウムは国内で唯一当社が製造していて、宇宙事業や航空事業の拡大に伴い、需要が増えてきています。こういった分野を成長分野と捉えています。
 

社会広聴会員:
障がい者支援の状況は。
カーリットホールディングス:
障がい者の方の雇用については、法定雇用率は満たしており、昨年も雇用実績があります。ただ、決められた数字を満たせばいいというものではなく、雇用した方がやりがいを持って働ける環境づくりが重要だと考えています。

参加者の感想から

●自動車からの緊急脱出に関心があり、今回の目的の1つは工具を使ったガラス割り体験でした。実際に体験したことにより自信が付きました。滅多にできることではありませんので、良い訓練となりました。

●工場の敷地内に土手を造ったり、建物の角度や距離を工夫して建てるなど、安全に設計されていると知り、企業倫理の高さを再認識しました。

●産業用爆薬の開発、製造や工場設備に使用する部品製造、自動車用発炎筒などのほか、ペットボトル飲料の製品加工など、幅広い事業を展開していることに驚きました。

●工場見学をしながらいろいろとご説明いただき、世界でもトップレベルの様々な技術を持つ企業だと分かりました。技術立国日本に触れることができた1日でした。 

カーリットホールディングス ご担当者より

 このたびは、日本カーリット 赤城工場にご来場いただきありがとうございました。危険物取扱に当たり、山間に工場がある、建屋が土手によって囲まれている等の安全への取り組みにつきましてご理解いただけたことと存じます。
 また発炎筒の着火、ピックによるサイドガラスの破壊、シートベルトカッターと各種体験をご用意させていただきました。今回のご経験が皆さまの緊急事態への備えとなれば、社員一同幸甚です。
 今後も皆さまの安全を支えられるよう、日々努力してまいります。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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