企業と生活者懇談会
2019年12月6日 神奈川
出席企業:三機工業
見学施設:三機テクノセンター

「『技術』と『人』を磨き、より『質』を高める総合開発拠点とは」

12月6日、三機工業の三機テクノセンター(神奈川県大和市)で「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員12名が参加しました。まず、三機工業から、創業94年目を迎える歴史と現在の建築設備事業を中心とする様々な事業分野について、続いて、三機テクノセンターの役割について説明を受けました。その後、同センターで、幅広い技術を紹介するテクノプラザや、実践的な技術・技能・安全意識を体系的に学ぶ研修エリアを見学し、最後に質疑懇談を行いました。 
三機工業からは、三機テクノセンターの泉和男執行役員三機テクノセンター長、藤井雅則副センター長、田島泰治管理部専門部長、経営企画室の小吉省吾課長、加藤京氏が出席しました。

三機工業からの説明

■三機工業の概要■
 三機工業は、1925年に旧三井物産株式会社 機械部から独立して創立し、現在においても三井グループの一員であり、グループをけん引する存在の二木会(三井グループの中核を担う25社)に属しています。創立当時は暖房機器の設置工事からスタートし、現在の東レである東洋レーヨンから大型工事を受注して大きく成長しました。戦時中は電気抵抗溶接鋼管や航空機部品などの製造業に進出し、戦後の高度成長期にはサッシ製造をはじめ上下水処理設備やごみ処理施設の設計・施工など様々な事業を展開しました。バブル期には建築設備を中心に情報通信事業やファシリティシステム事業などの新規事業にも取り組み、バブル崩壊後の苦しい時代においても海外に拠点を置くなど総合力で乗り越え、現在の総合エンジニアリング企業へと成長しています。
 同社の特徴として、多岐にわたる事業分野と強固な顧客基盤があります。主な事業は建物の「中身」(=建築設備)を扱っており、ビル空調衛生、産業空調、電気・情報通信、スマートビルソリューション、ファシリティシステム、機械システム、環境システム、不動産事業など幅広い事業分野を展開しています。そして、94年という長い歴史の中で信用力と強固な顧客基盤を築き、自動車、電機、医薬・医療、地方自治体、空港、インフラ事業など様々な業界のニーズに応えています。
 2025年に創立100周年を迎える三機工業は、100周年に向けた長期ビジョン“Century 2025”を策定しました。2016~2018年度を『質』を高める3年間、2019~2021年度を『信頼』を高める3年間、2022~2025年度を『選ばれる』4年間とし、この10年間で「質」と「信頼」をさらに高め、お客さまからもっと「選ばれる会社」を目指しています。 

■三機テクノセンターの役割 ■
 高い技術力の継承と発展を推進する研修・研究・研鑽の場として、2018年10月に「三機テクノセンター」が誕生し、同社グループの技術を紹介するテクノプラザ、研修エリア、研究エリア(R&Dセンター)、宿泊施設などの機能を備えています。同センターでは、同社社員だけでなく、協力会社の従業員も活用できる機会を積極的に設け、グループ全体の人と技術の「質」のさらなる向上に欠かせない施設として重要な役割を担っています。研修参加者に体感して覚えて帰ってもらうことが重要であるとの考えから、人事研修や資格取得対策などの座学研修に加え、「技術・技能研修エリア」と「安全体感エリア」を設置し、必ず技術や技能を身に付けて現場で生かしてもらうためにより実践的な研修を実施しています。
 さらに、同センターは、地域に開かれた施設として、大和市と締結した協定に基づき、災害時の帰宅困難者の受け入れ体制を構築しています。また、施設内にある「三機環境園」は、近隣住民の憩いの場、子どもたちの安全な遊び場として開放しています。さらに、大和市の職員や神奈川県労働基準局の局員に防護服やマスクの着用方法を教育するなど有事の際に対応いただけるよう様々な研修を実施しています。技術で貢献するだけでなく、同社のノウハウを地域社会にも展開していくことで、地域貢献の拠点としての役割を果たしています。

見学の様子

■技術を伝える「テクノプラザ」と世界最速「CBⅢ」 ■
 テクノプラザでは、SDGs(持続可能な開発目標)をコンセプトにした「快適性」「産業」「省エネルギー」「環境」の4つのブースで、同社の技術について学びました。
 「快適性」では、人間の活動における暑さや寒さなどの不快要因を取り除き、活動に適した環境を提供する技術を紹介しています。病院の病室や学校の体育館といった様々な空間が再現されたブースで、実際に設置された設備による最適環境を体感することができました。
 「産業」では、クリーンルーム技術、輸送技術などの最先端産業を支える独自の技術を紹介しています。例えば、自動車が全天候で機能するかを試験する環境をつくり出すための環境試験室や、空港を支える高度な手荷物搬送技術があります。特に、搬送設備試験室で見学した、国際空港や大型物流センターの高速搬送仕分け装置として開発を進めている「クロスベルトソータCB・」は、世界最速の毎分240メートルで走行し、1時間当たりの仕分け能力が最大1万6900個と高い性能を有しています。さらに、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用した事前トラブル予知システムなど最新技術も採用しています。実際にCB・による搬送仕分け作業のデモンストレーションでは、同社の高い技術を目の当たりにしました。
 「省エネルギー」では、世界的な環境問題に対する動向を受けて、エネルギー診断から設計・施工までを手掛けるなど、建築物の省エネ対策を総合的にサポートする取り組みを紹介しています。高効率な機器に取り換えるというイメージのある省エネですが、同社は、高効率システム・最適制御の導入から未利用熱の活用まで、お客さまのニーズと地域の特性をマッチングさせた幅広い省エネ対策を強みとしています。 
 「環境」では、持続可能な社会の実現に向けて、上下水処理、廃棄物処理などの環境インフラ設備やソリューションを通じて環境に貢献している同社の取り組みを紹介しています。環境への取り組みの一環として、手付かずの自然が残る南極の環境保全にも取り組んでいます。南極との関わりは、1957年に第2次南極観測隊にローラコンベヤを提供したことから始まっています。南極の環境保護に関する議定書が採択された1991年以降、同社から社員が国立極地研究所に出向し、南極観測隊員として昭和基地における廃棄物管理や排水処理など環境保全の側面から協力・支援しています。
 「テクノプラザ」や「CB・」の見学で、SDGsが掲示する中長期的な社会課題に対し、同社グループの事業活動を通じて貢献していることについて理解を深めることができました。 

■技術を継承する「技術・技能研修エリア」■
 技術・技能研修エリアは、同社の保有する技術力を将来に向け継承させることを目的とした空間です。技術・技能研修では、施工現場を再現したモックアップ(模型)や実機を活用し、従来現場でしか習得しきれなかった実践的な技術・技能を、「経験知」として受講生に身に付けてもらいます。同エリアには、建築設備事業(空調・衛生・電気)、プラント設備事業(機械・環境)の5つの教育エリアが備えられています。例えば、空調エリアでは、ビル空調で必要な空調設備を設置し、研修生は設備状況を確認し空調システムについて学ぶことができます。この5つの教育エリアでは、施工に関する手順書など平面だけでは分からない設備を実際に見ることで、技術と技能を習得させることができ、新入社員や若年層に対しては全ての分野を学習させることで質の高いエンジニアの育成を目指しています。
 間違い探しエリアでは、配管・ダクトや設備機器周りのモックアップによる間違い探しを行う仕組みが用意されています。正誤の施工例を対比し、まずは自分自身で考え、次にグループで視点の違いを生かして考え、最後に講師が解説することで、より効率的に知識を習得することができる仕組みになっており、実物を見て自分で考えることの大切さについても学ぶことができました。

■安全管理の重要性を実感する「安全体感エリア」■
  安全体感エリアは、危険を自ら体感して安全管理の重要性を知ることを目的とした空間です。安全管理研修では、疑似体感に加え、日本の安全衛生教育では一般常識となっている四段階法を生かした内容により、座学だけでは伝えきれない災害の恐ろしさと予防策の重要性を伝えています。研修の流れとしては、身だしなみチェックから始まり、不安全行動チェック、法定特別教育、墜落災害防止、各種足場体感、VR(バーチャルリアリティー)などの研修を経て、最後に虎の穴という復習エリアでテストを行い、研修を通じて安全管理に関する知識が身に付いているかどうかを確認しています。
 不安全行動チェックエリアでは、不安全な作業を再現するマネキンを見て、何が不安全行動かを自分で考えた後、グループで考えます。同社の教えとしては、他人の行動が不安全行動だと分かっているにもかかわらず、指摘しないことが問題であるということを強く伝えているとのことでした。
 同社からは、安全に関する教育を広く一般に共有したいとの思いから、自治体だけでなく一般企業など必要な人たちに研修の場を提供していきたいと考えており、同センターが地域貢献の拠点としての役割を果たしていることがうかがえました。

三機工業への質問と回答

社会広聴会員:
三機工業の施工実績について教えてください。
三機工業:
普段一般の方が目にしない身近なところで当社のシステムが活躍しています。東京ステーションホテルのレストランでは、食事の妨げにならないように、床からやわらかな風が吹き出す空調が設置されています。また、自動車やスマートフォンは、当社が施工した試験室やクリーンルームで性能試験や製造されているものも多く、間接的に当社設備を利用いただいています。さらに、成田空港の旅客手荷物搬送システム、砂町水再生センター(東京都)や大和市北部浄化センターの超微細気泡散気装置(エアロウイング)など、当社はエンジニアリングを通じて最適環境を提供しています。
 

社会広聴会員:
どのように新規事業に取り組んでいますか。
三機工業:
明確なルールや規定は設けておらず、基本的にお客さまのニーズから新規事業が生まれています。例えば、当社のクリーンルームについて、お客さまから「クリーンルームをつくりたいが、三機工業でできないか」とのご要望をいただき、当時日本初の大規模クリーンルームを手掛けることとなり、現在の事業につながっています。お客さまのニーズに合わせてシステムを構築していくことが、総合エンジニアリング企業である三機工業が提供できる価値であると考えています。
 

社会広聴会員:
産官学連携の事業を教えてください。
三機工業:
名古屋大学と連携した事例で、名古屋大学医学部附属病院病棟等ESCO事業があります。省エネ設備導入と施設運用改善により、年間7200トンのCO削減(2016年度実績)を達成するなどの高い省エネ効果を実現した国内初の管理一体型ESCO事業です。また、東北大学、香川高等専門学校、高知工業高等専門学校、日本下水道事業団、高知県須崎市と、国土交通省国土技術政策総合研究所からの委託研究であるB-DASHプロジェクト(下水道革新的技術実証事業)として、省エネルギーで安定した水質を確保できるのが特長であるDHSシステム(水量変動追従型水処理技術)の共同研究を行いました。 
 

社会広聴会員:
社会貢献活動について教えてください。
三機工業:
地域防災活動への参加、環境美化活動への参加、次世代育成支援として環境セミナーの実施をしています。また、大和市との災害時に関する協定の締結、「三機の森」の育樹活動、スポーツ・活性化支援として聴覚障がい者(デフ)ラグビー日本代表チームや大和市女子サッカーチーム「大和シルフィード」のオフィシャルスポンサーになっています。その他、当センターでの見学会を開催したり、台風被害による施設周辺の清掃を行ったりするなど、今後も地域の方々と積極的にコミュニケーションを図り、地域参画と発展への貢献を目指していきます。

参加者の感想から

●ビルの空調システム、空港の手荷物搬送システム、ごみ焼却施設などの設備を提供されており、三機工業が私たちの日常生活に密着している企業であることが分かりました。
●研修の最後に行われる「虎の穴」での試験について、合格点が100点であるとお聞きし、いかに安全最優先の考えを大切に教育されているのかという点が、深く印象に残りました。
●総合エンジニアリング企業としての使命感を持ち、現場作業の技術と安全のさらなる向上のために、三機テクノセンターの開設など様々な投資をされていると知り、三機工業の考え方に感銘を受けました。
●実物を目で見て触ることで知識を増やし、「現場ではできない失敗」を何度でも体験できる三機テクノセンターは、エンジニアにとって最高の学びの場であると思います 。
●身近なところでたくさんの地域貢献をされていて、素晴らしい企業であると感じました。

三機工業ご担当者より

 三機工業は、生活者の皆さまが日頃あまり目にしないところで様々な設備・技術を提供するエンジニアリング企業ですが、見学・懇談を通して社会的役割や事業について理解を深めていただけたかと思います。また、皆さまから貴重なご意見をいただき、大変有意義な会となりました。当社は現在、情報発信の強化を進めておりますので、今後もこのような機会をつくっていきたいと思います。本当にありがとうございました。 

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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