企業と生活者懇談会
2023年9月22日 大阪
出席企業:江崎グリコ
見学施設:江崎記念館

「100年を超える江崎グリコの軌跡をたどって、グリコスピリットを学ぼう!」

9月22日、江崎記念館(大阪府大阪市)で「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員18名が参加しました。まず、江崎グリコから、会社概要と50周年記念事業の一環として設立された同館の概要について説明を受けた後、「創業の時代」「商品の歴史」「広告の歴史」「おもちゃの歴史」の4つのコーナーにおいて、真空釜や映画付きグリコ自動販売機などの生産機材や広告・販促物の紹介を交えながら見学し、最後に質疑懇談を行いました。
江崎グリコからは、グループ広報部社史グループ長大川内浩氏、パブリックリレーションズグループ長伊藤雅樹氏、江崎記念館館長石橋達二氏、伊藤誠氏、西村隆志氏が出席しました。

江崎グリコからの説明

■江崎グリコの概要
 江崎グリコは、1922年、まだ多くの人々が栄養不足の状態だった時代、創業者江崎利一が「食品を通じて、国民の体位向上に貢献したい」という信念のもと、グリコーゲン入りの「栄養菓子グリコ」を創製したことから始まりました。
 現在、同社はチョコレートやスナック菓子など菓子類に加え、冷菓や乳製品なども販売する食品メーカーとして、多くの人々に愛される商品を提供しています。同社の代表的なロングセラー商品には、「ポッキー」や「ビスコ」、「ジャイアントコーン」や「プッチンプリン」などがあります。また現在注力している健康関連商品として、「アーモンド効果」や「SUNAO」もあります。その他にグリコグループでは、大腸検査前日の食事から、消化や排せつに配慮した大腸検査食「エニマクリン®」や、米粉パン用ミックス粉「こめの香®(グルテンフリー)」などの幅広い商品を展開しています。
 同社は、2022年に創立100周年を迎えました。100年の経験や取り組みを礎として、あらゆる世代の人々の食を通じた生活づくりに、これからの100年も貢献できるように挑戦し続けていくことを目指し、パーパス(存在意義)「すこやかな毎日、ゆたかな人生」を策定しました。このパーパスには、生活者それぞれが「すこやかな毎日」を送り、その日々の積み重ねによって「ゆたかな人生」を実現できるように、事業を通じて貢献していくという意志が込められています。
 健康意識が高まる現代社会において同社は、生活者の健康を維持・向上させるための、機能性素材の研究開発などに注力するなど、これからも新たな価値を生み出し、社会に役立つ存在であり続けることを使命として事業活動を行ってまいります。

 

■江崎記念館の特徴
 江崎記念館は、1972年3月、創立50周年記念事業の一環として、従業員に創業の志を伝え、社業の発展に寄与するために設立されました。設立当初は、創業の精神や創業者江崎利一の「栄養菓子グリコ」創製への想いなどを学ぶための研修施設として、またステークホルダー向けに、迎賓館のような役割として使用されてきました。しかし、お客さまから資料や収蔵品を見たいといった意見が多くあったことを受け、10年くらい前から本格的に、一般向けに見学できる機会を拡大しました。
 同館のツアーでは、まず、創業者江崎利一の紹介ムービーを視聴後、「創業の時代」「商品の歴史」「広告の歴史」「おもちゃの歴史」の4つのコーナーを見学します。各コーナーでは、当時使用されていた道具や懐かしのパッケージ、歴代のグリコネオンのジオラマなどが、また、「創業者江崎利一をしのぶ部屋」では、利一のゆかりの品々が展示されています。
 記念館の見学を通じて、創業から100年を超える江崎グリコの軌跡をたどり、今日の同社に受け継がれる創業の精神や、食品メーカーとしての工夫やこだわりなどを学ぶことができます。解説パネルには海外の人向けに二次元コードを読み取り、英文で見学できるデジタルコンテンツを取り入れる工夫もされています。

見学の様子

■創業の時代
 「創業の時代」では、創業以来の同社の歩みや、創業時代の工夫が、当時使用していた真空釜や配達車などとともに紹介されています。
 1919年、現在の佐賀市で薬種業を営んでいた利一は、漁師たちがカキを煮る大きな鍋から大量の煮汁がこぼれる光景を目にし、「カキには栄養素グリコーゲンが多量に含まれている」という記事を思い出しました。そこで、利一は大学付属の病院に煮汁の分析を依頼したところ、グリコーゲンが豊富に含まれていることが分かりました。医師の許可を得て、病で衰弱していた息子にカキのエキスを処方し、徐々に回復して元気になる姿を見て、グリコーゲンを多くの人に活用してもらいたいと考えました。
 利一は、まず、薬への利用を考えましたが予防こそが治療に勝ると考え、子どもたちの健康づくりのために、キャラメルにグリコーゲンを用いることを決めました。キャラメルづくりの経験がなかった利一ですが、試行錯誤を重ねた末に、1921年、「栄養菓子グリコ」が誕生しました。また、利一は、商品の販売にはマークも必要だと考え、鳩や花柄など試作しましたが納得できずにいたある日、かけっこする子どもたちの1人が勢いよく両手を挙げてゴールインする姿を見て、健康の維持には運動をすることが大切であり、これこそ「栄養菓子グリコ」のマークにふさわしいと考えました。近所の小学校でマークについて鳩や花柄なども含めてアンケートをした結果、ゴールインマークの人気が圧倒的に高かったことから、「栄養菓子グリコ」のマークに採用しました。「栄養菓子グリコ」の商品名は、栄養素「グリコーゲン」の最初の三文字をとり、語呂もよく、人々に覚えてもらいやすいだろうと名付けられました。

 

■商品の歴史
 「商品の歴史」では、同社の代表的な商品を紹介しています。
 「栄養菓子グリコ」は販売を開始して以降、思うように売れない日々が続きました。利一は、一流の販売店に陳列しなければ、一流の商品と見られるようにならないと考えました。歴史と伝統がある大阪の三越百貨店に通いつめ、1922年2月11日、無名の商品だった「グリコ」を店頭に置いてもらうことに成功しました。この日が現在の江崎グリコの創立記念日となっています。
 「栄養菓子グリコ」の販売が軌道に乗った頃、第二の栄養菓子を作ることを決めた利一が注目したのが、当時まだなじみの薄かったビスケットです。利一は、整腸などの栄養効果の高い酵母をビスケットに入れることを考えつきました。今年発売90年目を迎えた「ビスコ」ですが、商品開発の際、熱に弱い酵母の性質に苦慮し試作・研究を重ねながら酵母入りクリームをサンドしたビスケットが完成した歴史があります。酵母入りビスケットは略して「コービス」と呼ばれ、前後を入れ替えて「ビスコ」と命名されました。現在のビスコは、酵母ではなく乳酸菌が入っており、口どけや味わいについても日々改良を続けています。

 

■広告の歴史
 「広告の歴史」では、創業時からのユニークな広告を紹介しています。
 大阪で事業を拡大した同社は、東京での販売活動を展開しましたが、なかなか売れませんでした。1931年、利一は、東京を中心に映画付きグリコ自動販売機を設置しました。お金を入れると音楽と当時の人気時代劇が流れ、「グリコ」が出てくるという画期的な仕組みとなっています。この自動販売機は行列ができるほど人気を呼び、事業拡大の足掛かりとなりました。1935年には、大阪の観光名所のひとつである道頓堀に高さ33メートルのネオン塔を設置しました。特設ステージを設けた2代目や中央から水が吹き出す3代目からLED仕様に変わった現在の6代目に至るまで、大阪ミナミのシンボルとして現在もPRを続けています。
 参加者は、映画付き自動販売機再現の体験や、歴代のグリコネオンのジオラマの見学を通して、同社の画期的なプロモーションに感心していました。

 

■おもちゃの歴史
 「おもちゃの歴史」では、1922年から現在までに「栄養菓子グリコ」に入れられた約3万種類のうちの一部である約4000点のおもちゃを展示しています。
 利一は、「子どもにとって、食べることと遊ぶことは二大天職である」と考え、「栄養菓子グリコ」のお菓子は成長過程の子どもたちの栄養補給源として、おもちゃは子どもたちの心の健やかな発育に役立つようにとおもちゃ付きを考え出しました。発売当初は、絵カードや豆玩具が入れられ、1929年からはおもちゃの小箱が別途、お菓子本体と一体となって登場しました。おもちゃの考案や選定は、専門家の意見を聞いたり幼稚園の先生に審査してもらうなど当初から慎重に行っていました。これまでに生み出されたおもちゃは、約3万種類50億個以上にものぼり、その多くは、時代背景を反映したものです。おもちゃの変遷をたどるだけでも、ひとつの文化史が形成されるほどの展示になっています。
 参加者は、自身が子どもの頃に購入した「グリコ」のおもちゃを懐かしそうに見学するとともに、その数の多さに圧倒されていました。

 

 江崎記念館では、創業時からの江崎利一の「健康への想い」と実現のための「創意工夫」の精神を、当時の商品などとともに紹介しています。子どもたちの健康づくりから始まり、現在では全ての人の健康のために幅広い商品を提供している同社のたゆまぬ努力やこだわりについて理解を深めることができます。

懇談会の概要

社会広聴会員:
子どもたちの健康を実現するために何か新しい開発をしていますか。
江崎グリコ:
これまで乳児用ミルク製品は、粉ミルク製造しか認められていませんでしたが、近年相次いで発生する自然災害を背景に、2018年の省令改正により液体ミルクの製造が許可されたことを受け、2019年3月に、当社は日本初の乳児用液体ミルクを発売しました。液体ミルクを通じて、災害時の断水への備えをはじめ、多様な育児スタイルの推進を図り、育児の楽しさもシェアできる社会の実現を目指しています。

 

社会広聴会員:
商品のパッケージは変化していますか。
江崎グリコ:
当社は、全てのお客さまに安心して商品をご利用いただけるように、時代の変化に合わせてパッケージデザインを変えていく工夫を日々重ねています。2023年8月、「炊き込みご膳」の裏面のパッケージを刷新しました。この商品パッケージは、「見やすく、分かりやすく、伝わりやすい」を追求しユニバーサルコミュニケーションデザイン協会による第三者認証を、国内の食品メーカーとして初めて取得しました。

 

社会広聴会員:
どのような社会貢献事業をしていますか。 
江崎グリコ:
幾つかある社会貢献事業の中のひとつをご紹介しますと、当社は、2016年に、お菓子(「ポッキー」)で学習できる無料アプリ、プログラミング教材「GLICODE®」を開発しました。「グリコ」のお菓子をきっかけにプログラミングに興味を持ってもらいたい、次代のおもちゃとして親しんでもらいたいという思いが込められています。2020年度には小学校でプログラミング教育が必修化され、全国各地の小学校の授業で利用されています。現在、日本語、英語、中国語、タイ語の4カ国語に対応しており、日本だけではなく、海外でも高く評価され、世界中のプログラミングの授業に活用いただいております。

 

社会広聴会員:
健康食品の事業展開において大切にしていることは何ですか。
江崎グリコ:
当社は、時代に応じた消費者の心理や志向などの「変わるもの」と、食品事業を通じて社会に貢献する創業精神の「変えないもの」を意識して商品の開発を行っています。創業時からおいしさと健康を常に意識した研究を行い、菓子・乳業・冷菓事業をはじめとし、健康に配慮した商品の企画から販売まで進めています。代表的な商品としては、「アーモンド効果」「SUNAО」「GABA」シリーズがあります。

参加者からの感想

●「グリコ」が、グリコーゲンが入っている栄養食品であることは知っていましたが、カキの煮汁が原料であることや創業者江崎利一の創意工夫、不屈邁進の精神、事業への情熱を知り大変感動しました。
●江崎記念館の見学を通して、企業理念や創業者の考えが100年経っても受け継がれていることがよく分かりました。高齢社会において健康経営が注目されているので、新たな挑戦に期待しています。
●創意工夫と人生の中で学び続けた江崎グリコの創業者江崎利一の想いを体感できました。懐かしいおもちゃは全ての世代の心の中に残る商品になっているのではないかと思いました。
●統合レポートを読んで理解していたつもりでしたが、当日の企業概要説明と江崎記念館の見学を通じて、創業者の「人々の健康に貢献する」精神が深く浸透している会社であることを理解することができました。

江崎グリコ ご担当者より

 私たちグループ広報部は、生活者との双方向のコミュニケーションを重要視しながら日々の活動に取り組んでいます。そうした中、企業活動への意識・関心の高い出席者の方々と、今回このような貴重な懇談の場を持つことができ、厚くお礼申し上げます。不十分な回答にはご容赦をいただくとともに、末永くグリコファンとしてご支持・ご支援いただきますよう、今後ともよろしくお願い申し上げます。今回は誠にありがとうございました。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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