企業広報賞

第14回(1998年度)

1.企業広報賞受賞理由

最優秀賞

社会から求められているものを見極め、それを経営に反映させるとともに、社会への情報発信を積極的に展開している企業が対象となります。
*敬称略、受賞者名五十音順
富士写真フイルム株式会社
日本の写真市場に参入障壁があるとの、米国コダック社によるUSTR提訴および米国政府によるWTO提訴に対し、内外メディアへの会見やブリーフィング、オピニオンリーダーへの反論書の配布、米国主要紙への意見広告、企業広告の掲載、そしてインターネットを活用するなどして、冷静にかつ具体的事実に基づき反論広報を展開した。特にその膨大な量の反論内容を、すべて一般に公開するホームページには、欧米のオピニオンリーダーや企業人からのアクセスが多数あり、自社の経営理念、経営情報、市場実態を世界に発信、そして認知させるのに大きな役割を果たしたといえる。本件は、WTOパネルの最終報告で、その主張が全面的に認められ決着した。

優秀賞

社会から求められているものを見極め、それを経営に反映させるとともに、社会への情報発信を積極的に展開している企業が対象となります。
日本アイ・ビー・エム株式会社
社会への環境情報の公開を目的に発行している「環境プログレス・レポート」には、企業が出したい情報ではなく、社会が知りたい情報をという観点から、ネガティブ情報についての記載があるなど、経営者に入れる情報はすなわち社会に出すべき情報であるという意識の高さが、企業としての透明性を確立させている。
天城、伊豆、富士会議をはじめ地域有識者会議の開催など、業績に関わらず地道な社会貢献活動を長期に亘り継続しており、また長野オリンピック、パラリンピックにおいては、競技結果の即時発信をはじめ、運営・管理に至るまでその高いテクノロジーを駆使し大会の成功に大きく寄与した。
エムケイ株式会社
「タクシー事業は、単なる一私企業ではなく、社会性を持った公共機関である」という自社の基本的な考え方に基づき、一貫して「同一地域同一運賃」などの規制の緩和・撤廃を求め実行してきた。その経営理念、事業活動を一般消費者に理解してもらうための広報活動が運輸省、業界関係者の反対という逆境を打開し、同社の事業を推進する原動力となった。
地元にとどまらず、大阪、東京と事業範囲を広げながら、「関空スカイゲイトシャトル」の新規免許取得など利用者へのサービスという理念に裏付けられた、業界他社に先駆けた新しい取り組みを行っている。
株式会社エーエム・ピーエム・ジャパン
「からだや地球環境を考えた商品作り」を掲げ廃棄までを考慮したPB商品を開発し、昨年度は小売業では世界で初めて「ISO14001」を取得するなどの環境対策を始めとし、デリバリー業務の導入拡大、乳幼児用食品の取り扱い、介護用品の実験販売など地域社会で生じる生活者の多様な要望に応えていくなど、新たな試みに取り組んでいる。
地域社会のための「ライフライン」的存在でありたいという理念を、これらの事業活動にダイレクトに反映させ、その情報をマスコミ、店頭、ホームページを通じて公開し、生活者から広く共感を得ている。

優秀経営者賞

企業の広報活動をトップの役割と認識し、その活動において特筆すべき成果をおさめた経営者、あるいは日本経済に対する諸外国からの理解促進に貢献した経営者が対象となります。
鈴木 敏文氏(株式会社イトーヨーカ堂 代表取締役社長)
業務改革を推進し、コスト削減や経営合理化によりロスを限りなく減らすと同時に変化しつづける顧客のニーズに対応していくため、店長会議などの生の情報を大切にしながら環境の変化の兆しを捉え、すばやく意思決定し、実行する「トップダウン」の経営を実践し、消費の低迷する小売業界の活性化に寄与している。
取材、会見、ミーティングなど自らが発言することで、内外のステークホルダーに対し、経営についての明確なメッセージを伝えていると同時に、環境報告書の外部監査を実施するなど、社会に対する透明性を徹底させている。
鈴木 修氏(スズキ株式会社 取締役社長)
経営者自身が現場で情報を集め決断するという信条を持ち、「ボトムアップはコストアップ。トップダウンこそがコストダウン」という言葉に象徴されるように、強力なリーダーシップで徹底したコストダウン経営を実践している。
決断をする者自身がその理由を説明するという意味において、自らスポークスマンの立場を強く認識し、感じていることや考えを誇張することなく誠実に伝えるその姿が会社のイメージを国内外に高めた。

功労・奨励賞

長年広報活動に携わり企業広報の発展に功労の大きかった個人、あるいは奨励に値する企業広報を実践している個人が対象となります。
吉澤 一成氏(サントリー株式会社 生活環境部お客様相談室長)
非上場、オーナー企業だが「企業の社会性」を重視し、「オープンかつ透明性のある企業」を目指した経営情報の開示や、トップ広報を積極的に推進し、一方で美術館、文化財団、サントリーホールなどを通じた同社の社会文化活動についての広報にも永年たずさわり、その取り組みが高く評価されている。
1968年の入社以来、本年4月まで通算で28年間広報を経験。社会との接点である広報活動を通じて培ったバランス感覚と、社会動向の急速かつ多様な変化を見極めるなかで得た深い洞察力より、マスコミ関係者をはじめ企業の広報マンから厚い信頼を寄せられている。
小野 豊和氏(松下電器産業株式会社 国際人事センター東京人事グループ主担当)
1984年から広報本部に在籍し、雑誌・新聞・海外媒体などに対する活動を行い、特に昨年度においては、ペルー日本大使公邸人質事件での広報担当、長野冬季オリンピックでの松下グループ広報担当をつとめ、その常に誠実な対応ぶりが高く評価されている。中でも緊迫した状況下のペルーでは、献身的な努力で地元の電波事情を調査し、NHKの国際放送「ラジオ日本」の放送を実現させ、人質および人質家族に勇気を与える役割を果たした
日本広報学会での活躍など一企業の広報担当者の枠を越えた活動もさることながら、各種経済誌や単行本への企画の提案、自身での執筆など企業の広報マンとしての功績も大きい。
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